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2021年 第71回ベルリン国際映画祭コンペティション部門15作品紹介

第71回ベルリン国際映画祭

第71回ベルリン国際映画祭ポスター
第71回ベルリン国際映画祭ポスター。今回は3月はオンライン、6月は劇場でと、分散して開催。 - (C)Alexander Janetzko / Berlinale 2020

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で3月1日~3月5日(現地時間)にオンラインで開催することとなった今年の第71回ベルリン国際映画祭。日本からはコンペティション部門に濱口竜介監督の『偶然と想像』、またパノラマ部門に春本雄二郎監督の『由宇子の天秤』が出品される。ここではコンペティション部門15作品を紹介。ヨーロッパ勢を中心に 16か国からエントリーされる中、金熊賞はどの作品に!?(文:岩永めぐみ/平野敦子/本間綾香)

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<金熊賞>『バッド・ラック・バンギング・オア・ルーニー・ポルノ(英題) / Bad Luck Banging or Loony Porn』

バッド・ラック・バンギング・オア・ルーニー・ポルノ
『バッド・ラック・バンギング・オア・ルーニー・ポルノ(英題) / Bad Luck Banging or Loony Porn』より -(C)Silviu Ghetie / Micro Film 2021

製作国:ルーマニア、ルクセンブルク、クロアチア、チェコ
監督:ラドゥ・ジュード

【ストーリー】
教師のエミはプライベートのセックス動画がインターネットに流出し、キャリアも評判も失墜の危機に。生徒の父母たちは彼女の解雇を要求するが、エミは断固拒否してこれに立ち向かう。

【ここに注目】
2015年の西部劇コメディー『アフェリム!(原題) / Aferim!』で第65回本映画祭最優秀監督賞を受賞し注目された、ルーマニアの気鋭ラドゥ・ジュード。監督・脚本を務めた新作は現代社会の偽善と偏見を痛烈に皮肉る、ブラックユーモアを散りばめたドラマ作品となっている。エミ役で主演するのは、ルーマニアのクリスティアン・ムンジウ監督作『汚(けが)れなき祈り』(2012)に出演しているカティア・パスカリウ

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<審査員グランプリ>『偶然と想像』

偶然と想像
『偶然と想像』より -(C)2021 Neopa / Fictive

製作国:日本
監督:濱口竜介

【ストーリー】
モデルの芽衣子は、ヘアメイクの親友つぐみが自分の元カレの和明に惹かれていると知る(第1話『魔法(よりもっと不確か)』)。落第した男子学生・佐々木が、芥川賞を受賞した大学教授の瀬川に仕返しする(第2話『扉は開けたままで』)。20年ぶりに再会した高校時代の友人、夏子とあやを描く(第3話『もう一度』)。

【ここに注目】
カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出された『寝ても覚めても』(2018)の監督、ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞した『スパイの妻<劇場版>』(2020)の共同脚本家として知られる濱口竜介が、監督・脚本を務めた新作。「偶然」と「想像」をテーマに3話構成で描くオムニバスで、古川琴音中島歩玄理渋川清彦森郁月甲斐翔真占部房子河井青葉らが出演している。

<審査員賞>『ミスター・バックマン・アンド・ヒズ・クラス(英題) / Mr. Bachmann and His Class』

ミスター・バックマン・アンド・ヒズ・クラス
『ミスター・バックマン・アンド・ヒズ・クラス(英題) / Mr. Bachmann and His Class』より -(C)Madonnen Film

製作国:ドイツ
監督:マリア・スペト

【ストーリー】
多くの移民たちが暮らすドイツの都市・シュタットアレンドルフのとある学校の、気さくなバックマン先生は、生徒たちがリラックスして授業を受けられるように思いやりを持って接している。そのクラスには12か国の異なる国籍を持つ、12歳から14歳までの生徒たちがおり、中にはまだドイツ語をうまく話せない者もいる。

【ここに注目】
『官能』(2001)などのマリア・スペトが監督を手掛けたドキュメンタリー。ユニークな教育方針で子供たちとの間に信頼関係を築いてきた小学校教諭のバックマン氏と、彼が受け持つクラスの生徒たちにカメラを向ける。社会派作品が多く集まる本映画祭で、コンペ作品中ドキュメンタリー作品は本作のみ。右傾化や移民問題が深刻な社会問題として取り上げられることの多いヨーロッパで、子どもたちへの教育がいかに大事かを伝える本作は、観る者に希望を与えてくれる。

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<最優秀監督賞>デーネシュ・ナジ『ナチュラル・ライト(英題) / Natural Light』

ナチュラル・ライト
『ナチュラル・ライト(英題) / Natural Light』より -(C)Tamas Dobos

製作国:ハンガリー、ラトビア、フランス、ドイツ
監督:デーネシュ・ナジ

【ストーリー】
第二次世界大戦時、占領下のソ連。イシュトヴァン・シェメトカはハンガリーの農民だが、ハンガリー人から成る特別部隊に兵士として所属し、パルチザングループを偵察する任務にあたっていた。しかし、遠方の村へ向かう途中、敵の砲撃を受け、指揮官が命を落とす。部隊の指揮を執ることになったイシュトヴァンだったが、制御不能な混乱に巻き込まれていく。

【ここに注目】
長編デビュー作でコンペティション部門にノミネートされたハンガリーの新鋭デーネシュ・ナジ監督。ハンガリーとドイツで映画を学んだ後、短編映画やドキュメンタリーを手掛け、短編の『ソフト・レイン(英題) / Soft Rain』(2013)はカンヌ国際映画祭の監督週間をはじめとする国際映画祭で上映された。本作は第二次世界大戦を舞台にした小説を映画化した戦争ドラマで、メインキャストをアマチュアの俳優たちが務めている。

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<最優秀主演賞>マレン・エッゲルト『アイム・ユアー・マン(英題) / I’m Your Man』

アイム・ユアー・マン
『アイム・ユアー・マン(英題) / I’m Your Man』より -(C)Christine Fenzl

製作国:ドイツ
監督:マリア・シュラーダー

【ストーリー】
ベルリンの有名なペルガモン博物館で働く科学者のアルマは、研究資金を得るために、特殊な研究への協力を求められる。そしてライフパートナーとなるよう設計され、アルマの性格と要求に合致するように造られた、ヒューマノイドロボットのトムと3週間共に暮らすことになる。

【ここに注目】
ソハの地下水道』(2011)などで女優としても活動するマリア・シュラーダーが監督を務め、生身の人間とヒューマノイドロボットの悲喜こもごもを描く近未来的ラブストーリー。『まともな男』(2015)などのマレン・エッゲルトが主人公アルマを、『野性の呼び声』(2020)などのダン・スティーヴンスがヒューマノイドロボットを好演。『エイミー・アンド・ジャガー(原題) / Aimee & Jaguar』で、第49回本映画祭の最優秀女優賞を受賞したシュラーダーが、今回は監督として受賞を狙う。

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<最優秀助演賞>リラ・キツリンガー『フォレスト?アイ・シー・ユー・エブリウェア(英題) / Forest ? I See You Everywhere』

フォレスト?アイ・シー・ユー・エブリウェア
『フォレスト?アイ・シー・ユー・エブリウェア(英題) / Forest ? I See You Everywhere』より -(C)Akos Nyoszoli, Matyas Gyuricza

製作国:ハンガリー
監督:バネデク・フリーガオフ

【ストーリー】
生きているのかさえわからない無口な老人。衣装だんすに話しかける男。催眠術にかかったような奇妙な7人は、初めは無害に見えたものの、やがて内に抱えていた感情が膨らんで爆発寸前となる……。

【ここに注目】
ハンガリーの監督・脚本家バネデク・フリーガオフは、映像学校には進まずヤンチョー・ミクローシュのアシスタントとして監督スキルを学んだ。2003年に長編劇映画初メガホンとなる『フォレスト(英題) / Forest』が、本映画祭でヴォルフガング・シュタウテ賞(最優秀新人監督賞)を受賞。同作はブダペストに生きる現代の若者たちのリアルな姿を描いたドラマで、アマチュアたちが主要キャラクターを演じた。今回の新作はこの続編となり、さまざまな心理状況に置かれた人間たちの身体性や境界に焦点を合わせている。

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<最優秀脚本賞>ホン・サンス『イントロダクション(英題) / Introduction』

イントロダクション
『イントロダクション(英題) / Introduction』より -(C)Jeonwonsa Film Co.Production

製作国:韓国
監督:ホン・サンス

【ストーリー】
青年ヨンホは、医師である父親に呼び出され、有名俳優の治療で忙しい父親を待つことに……。しばらくしてヨンホはベルリンに留学した恋人のジュウォンを驚かせようと突然ベルリンに現れた。そして、彼は母親の口利きでアーティストの家に宿泊することになる。

【ここに注目】
本映画祭の常連監督であるホン・サンス監督の長編劇映画25作目にあたる最新作。人間の心の機微を描かせたら右に出る者はいない名監督が、人生に惑いながらも自身の進むべき道を見つけようとする青年の姿を描く。本映画祭では『夜の浜辺でひとり』(2017)で最優秀女優賞を受賞したキム・ミニと、『逃げた女』(2020)で最優秀監督賞を受賞したホン監督による、最強コンビの再タッグに関心が集まる。

<芸術貢献賞>イブラン・アスアド『ア・コップ・ムービー(英題) / A Cop Movie』

ア・コップ・ムービー
『ア・コップ・ムービー(英題) / A Cop Movie』より - (C)No Ficcion

製作国:メキシコ
監督:アロンソ・ルイスパラシオス

【ストーリー】
メキシコシティの貧困地域が舞台。職務にプライドを持った警察官が味わうシステムの破綻を、フィクション的要素とドキュメンタリースタイルを交錯させた実験的映像で描く。

【ここに注目】
メキシコ出身のアロンソ・ルイスパラシオスは、2014年の長編初監督作『グエロス』がベルリン国際映画祭で最優秀新人作品賞を受賞。ガエル・ガルシア・ベルナルを主演に迎えた2018年の長編第2作『ミュージアム(英題) / Museum』は、同映画祭で最優秀脚本賞を獲得した。新作はモニカ・デル・カルメンラウール・ブリオネスが主演。メキシコの最も深い闇と言える、警察組織の腐敗と、彼らが抱く正義感の両側面を内部の視点から描いている。

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