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2004年3月

私的映画宣言

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ライター
先日、『ペイチェック 消された記憶』で来日したベン・アフレックを取材しました。彼のパンツが埃だらけで笑ったけど、かくいう私も静電気人間。コートはすぐ真っ白になるし、PCもフリーズしがち。歩いていて、すれ違った他人と指先が触れてビリリ!なんてことも。重度の花粉症でも春の方がまだまし、かな?
ライター
ソフィア・コッポラの取材でパーク・ハイアット東京へ。『ロスト・イン・トランス レーション』もどきな気分でも味わおうかと、ニューヨークグリルでランチしたら、 ウエイターが驚くほど丁寧で親切だった。んー、このホスピタリティの念の入 れ方は元からだったのか、それともソフィアの映画の影響か……。どっちですか?
ライター
“ケン・ワナタビ”のオスカー受賞が注目されていた日、由布院の温泉に浸かってま した。例年より授賞式が1ヶ月早く開催されることをすーっかり忘れ、旅の計画を立 ててしまった結果で御座います。トホホ……。その後、ビデオで見たけど、字幕付き バージョンで大正解。今年は皆、ブラックユーモア吐きまくりで大笑い。ビリー・ク リスタルに惚れちまいそう。
 ディボース・ショウ

『ファーゴ』や『バーバー』などの鬼才、コーエン兄弟の新作は、プリナップ(婚前契約)が盛んなLAを舞台にした結婚&離婚バトル。実際マイケル・ダグラスと破格の婚前契約を結び結婚したキャサリン・ゼタ=ジョーンズがその経験を生かし、美貌で男達を軽く手玉に取る。彼女の敵役に『コンフェッション』のジョージ・クルーニー。互いに相手を出し抜こうとする男女の激しい戦いは見ごたえたっぷり。主演2人の相性も抜群で楽しめる。
日本公開:4月10日(みゆき座 他 )
上映時間:1時間42分
配給:UIP



男を踏み台にのしあがってゆくゼタ=ジョーンズと、女に足下すくわれるプレイボーイのクルーニー。あまりに似あいすぎていて、もしかして地? と思わせるおかしさ。ゼタは最近、女を武器に生きる守銭奴女性の役が多い。彼女のそういった自虐的ギャグな精神大好き。実生活の結婚でも彼女は婚前契約が話題になっていたけど、今作のテーマである“婚前契約”=ゼタ!と思いついた時点でこのコメディーは成功だ。高級スポーツクラブに集う離婚成金の女性たちが明らかに整形顔集団だったり、皺々のおばあさんが慰謝料ふんだくるために赤裸々性ライフを語ったり、笑える小ネタもふんだんで普通に楽しい。かといって、コーエン兄弟ファンがこれで満足するのかと聞かれると、ちょっと疑問。


オヤジ殺しの異名を持ち(!?)、私生活でマイケル・ダグラスと“婚前契約”を結ん でるゼタ=ジョーンズが財産目当ての結婚・離婚を繰り返す。ハマり過ぎと思うが、 こんな役をやるのもオスカー女優の余裕か。敏腕弁護士役のクルーニーもクライアン トのことより、歯の手入れに余念のない男を嬉々として演じてる。この2人が顔を並 べるだけで、ゴージャスになるから不思議だ。そして、脇もいい。素っ頓狂な南部ナ マリをしゃべるビリー・ボブは小さな役でも場をさらってる。ブチ切れるジェフリー ・ラッシュも私は好きだ。というワケで役者を見てるだけで楽しい。でも、肝心の話 はというと、色と欲が絡むのにスマートに収まりすぎて毒がない。コーエン兄弟なら ば、『ブラッドシンプル』、『ファーゴ』のように、もっとブラックな笑いが後を引 く話を見たいけど。


ユーモアに溢れ、セクシーで、仕事が出来て……。ここのところイマイチの作品が多 かったジョージ様が、お得意のキャラクターで帰ってきた! それだけでジョージ・ ファンとしてはOKなんだけど、ブラックジョーク大好きのジョージらしい作品になっ ているのも嬉しい。ハリウッドのセレブたちもきっと交わしているであろう婚前契約 をモチーフに、キャサリン・ゼタ=ジョーンズの自虐的ギャグあり、ブッシュ大統領 の故郷テキサスを田舎扱いする小ネタあり、締めは記憶に新しいゴシップ、ブリト ニー・スピアーズ絡みのネタまである(映画の方が先に製作されていたから偶然だけ ど、タイムリーなネタということで)。改めて知るセレブの生活。奥深い。

 オーシャン・オブ・ファイヤー

『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルンことヴィゴ・モーテンセン主演のアクション・アドベンチャー。19世紀末期を舞台に、アラビア砂漠で行なわれた決死のホース・レースとそれに挑んだカウボーイと野生馬の友情を描く。次々と罠を仕掛けてくる悪人たちと想像を絶する自然の脅威。ときにくじけそうになりながら、黙々と馬と走り続ける孤高のカウボーイに扮したヴィゴの勇姿が美しい。『アラビアのロレンス』のオマー・シャリフ共演。

日本公開:4月17日
(丸の内ルーブル 他)
上映時間:2時間17分
ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)



馬とヴィゴの友情物語みたいのだったら退屈だなぁと思っていたら、全然、違う。どこか懐かしい香りのする冒険活劇だった。レース途中には、わかりやすい悪党が登場し、次々と罠をしかけ、終いにはお姫さままで出てきて、思ったとおり、さらわれてしまう。もちろんヴィゴの活躍で一件落着! 西部劇スパイスのチキチキマシン猛レースのインディ・ジョーンズあえ、といった感じだ。それにしてもヴィゴと馬という画が美しすぎて、観ていてちっとも飽きない。夕陽をバックにしたヴィゴと馬。砂漠を横断するヴィゴと馬。砂嵐を避けるヴィゴと馬。もうヴィゴと馬だけをおかずに、どんぶり飯2杯はイケそう。ほんと素敵! “巨乳アイドルに水着”と同じくらい人の気分を高揚させます、ヴィゴに馬!


主演を張るまで、長い道のりだったね、ヴィゴ。と思わず、スクリーンの中の彼を見 てしみじみと思う。しっかしなー、また馬に乗って、命がけの旅に出る作品を選ぶっ てのは、どーなのよ。つい『ロード・オブ・ザ・リング』との類似点を考えてしまう じゃないか。闇の力はないけれど、すんごい勢いの砂嵐には襲われ、黒髪の美女にも 慕われ、使命まで背負ってる。何より、ヴィゴには寡黙で信念を貫く男が似合っちゃ うんで、このまま行ったらタイプキャストされてしまうのではないかと心配。ああ、 ロードの呪縛……。まあ、映画の本編はとてもシンプル。壮絶なサイバイバルレース には見入らずにはいられない。荒野や砂漠を走る馬には、競馬場を疾走する『シービ スケット』とは違う美しさを感じる。


ラッセル・クロウやヴィゴ・たちの活躍を見ると、子の成長を見守る親のように嬉し くってたまらない。つい最近まで日本が誇る(笑)東映Vアメリカシリーズに出てい た2人だぜ。ラッセルは過去を抹消したらしいが(笑)、ヴィゴなんて、いまだに 「ヤクザVSマフィア」で共演した石橋凌とマブダチと公言している。そんなイイ奴 ヴィゴの新作は、彼にピッタリの野性味溢れる闘う男。『ロード・オブ・ザ・リン グ』とかなりかぶっているが、そんな小さな事は“自由人”ヴィゴは気にしない、気 にしない。内容的には元祖パリ・ダカ物語って感じで、ラリードライバー篠塚建次郎 (山口百恵の義兄)の元おっかけとしては手に汗握る興奮を味わえた。大変なんや で、砂漠は。

 恋愛適齢期


オスカー俳優、ジャック・ニコルソンとダイアン・キートンが老いらくの恋に落ちるラブコメディー。監督・脚本は『ハート・オブ・ウーマン』など、働く女性の本音を独自の視点で描くナンシー・マイヤーズ。若い女性大好き男と恋を引退していたキャリアウーマンのすれ違う恋心に爆笑しながら、いつしか感動が。キートンに恋する若い医師にキアヌ・リーヴス。彼の「恋に年齢は関係ない」というセリフが世の妙齢女性に勇気を与えそう。

日本公開:3月27日
(丸の内ルーブル 他)
上映時間:2時間8分
配給:ワーナー・ブラザース映画




何がびっくりって脱ぎ系女優のアマンダ・ピートが脱がずに、ダイアン・キートンが脱いでるとこだろうか。しかも、いい身体。これなら若き医師役のキアヌに惚れられてもおかしくない。一方でニコルソンの半ケツ姿の情けないこと。彼が薬で錯乱した姿は逮捕されたジェームズ・ブラウンみたいになっちゃってて、さらに爆笑。ただ笑えるだけでなく、恋愛の真理をついているのが、この映画の面白いところ。キートンがニコルソンに「恋愛なんかしなければ、これまで通りずっと1人で生きてこれたのに」と告白するところなんて、うるっときた。監督、わかってらっしゃる! キアヌが言う「愛に年齢は関係ない」の台詞は、頑張ってる妙齢女性たちへのご褒美? コラーゲンより若返りに効きそうだ。


ひとことで言うと、熟年パワー炸裂の映画。ニコルソンは象の皮膚のような迫力の ヒップをさらし、キートンはもろ肌脱いでる。ある意味、壮絶な裸対決。とくにキー トンはシワワな口元以外は、『アニー・ホール』(77年)以来、変わってないんじゃ ないか思うほど、贅肉なしのボディでコンサバなコスチュームをあれこれ着て、恋す る女性のかわいらしさをチャーミングに演じる。で、同世代男だけでなく、若いツバ メ世代のキアヌにも愛されるなんて羨ましい。女と生まれたからにはこうありたい よ。監督のナンシー・メイヤーズはメル・ギブ主演の『ハート・オブ・ウーマン』で もそうだったが、女性の願望をすくい取るのが上手い。キートン演じた女流脚本家と 監督本人はかなり類似してるらしいが、もしかして恋の話も……。だとしたら、自慢 かと思うのは考え過ぎ?


ハリウッドって底辺が広い。日本では描きにくい熟年カップルの恋と性の問題をカ ラッとユーモラスに、でも演技派2人を起用して説得力あるエンターテインメントに 仕上げてしまうなんて。でも何より驚いたのがキアヌ。『マトリックス』シリーズで も、セリフを話すと「アタタタ……」と観客を思いっきり現実世界へ引き戻してくれ ていたが(笑)、まさか熟女を誘惑し、おまけに三角関係に心揺れる微妙な役所を演 じるようになるなんて。共演者に演技に引っ張られたというのもあるのだろうけど、 キアヌの演技も自然で、程良く色気もあって、あら、いい男。惚れ直した。最後はへなちょこになった『マトリックス』シリーズで過ごした時間も経験も無駄じゃなかった んだね(笑)。

 エレファント

全米を震撼させたコロラド州コロンバイン高校の銃乱射事件に衝撃を受けた、『誘う女』のガス・ヴァン・サント監督入魂の問題作。彼は世界に向けて「なぜ?」と問い続ける。素人の高校生の実体験から真実の言葉を引き出した本作は、2003年のカンヌ国際映画祭で史上初のパルム・ドールと監督賞のW受賞という快挙を果たした。“あの事件”の脆くて傷つきやすい少年達の日常がリアルで切ない。静かだが強い衝撃を残す最高傑作だ。

日本公開:3月27日
(シネセゾン渋谷 他)
上映時間:1時間21分

配給:東京テアトル/エレファント・ピクチャー





この映画と同様なことが実際に起きたのかと思うと、観終わった後、席を立てなくなるほどの衝撃。真っ青な空の下でアメフトの掛け合いの声が響き渡っていた最初のシーンから、惨劇を観せられたラストのどん底気分までの落差が激しすぎる。ニュースで聞くと、死んだ人は数でしかないけれど、こうやってひとりひとりの映像を観せられると、当たり前だけど、それぞれの人生があったことを気づかされる。近すぎず通すぎないカメラ、まったく有名人の出てこないキャスト、時間軸を微妙に交錯した進行、すべてが計算済みで、クライマックスで銃乱射がされることがわかっていても、信じたくない気持ち。かわいい男のコが結構、出てくるので、もうちょいイケメンチェックしとけばよかったな。でも無理。


コロンバイン高校の事件を題材にした、『ボウリング・フォー・コロンバイン』とは 正反対のテイスト。ある高校を舞台に、いく人かの生徒たちの日常に焦点を当て、事 件発生までをドキュメンタリータッチで描く。悲惨な事件が題材なのに、神々しくも 見える空が何度となく挿入され、BGMには月光のソナタのメロディ。残酷なぐらい美 しすぎる。結局のところ、なぜ事件が起こったのかについての言及はないので、個人 的には物足りなさを感じたが、金髪少年クンをはじめ、オーディションで起用された 高校生たちを通して、今どきの若者たちの一面を見たような気になる。ところで、そ の金髪少年の父役で名作『ジョニーは戦場に行った』のティモシー・ボトムスが出て た。中年になったらブッシュ大統領に激似って、なんだかな。


カンヌ映画祭でパルムドール受賞が決まったその夜、ハイテンションになったこの映 画の配給会社のMちゃんから「今日は私のおごり~!」とシャンパンをご馳走になった (2本ぐらい開けたのは覚えてる)、個人的な思い出の深い作品。あまりにも映像が キレイで、しかも、本当に普通の生活を送っているから、突然やってきた“恐怖”と いうのがあまりにも残酷で胸が痛い。それにしても、さすがは母性本能くすぐるよう な美少年好きのガス・ヴァン・サント。出演者全員、彼好み。特にジョン(黄色いT シャツの子ね)は、リバー・フェニックス系で今後伸びそうネ。シリアスな内容の映 画に不謹慎と思いつつ、ついついそっちの方へ目がいってしまった。

  殺人の追憶

実際に起きた未解決連続殺人事件をテーマにした衝撃サスペンス。韓国で560万人を越える動員数を記録。事実を基に綿密に構成された脚本と緊迫感あふれる映像で、犯人を追う刑事たちの焦燥感が身近に迫る。東京国際映画祭アジア映画賞受賞。主役は『シュリ』『JSA』で知られる、韓国の名優、ソン・ガンホ。田舎町の少々、愚鈍な刑事を演じるため、体重を10kg増やし役作りした。監督・脚本は『ほえる犬はかまない』のポン・ジュノ。

日本公開:3月27日
(渋谷シネ・アミューズ 他)
上映時間:2時間10分
配給:シネカノン




韓国では、ソン・ガンホが出演するだけで客が呼べるそうだが、わかる気がする。彼の出る作品は必ず面白いし、演技も本気。今回も地道だけど報われない、田舎の愚鈍な刑事役がハマっていた。監督もリアリティにこだわっている。というか、実際に被害に遭った人がいるわけだから、リアルに作ることに相当な自信があったはず。殺人事件が珍しい人々がわらわらと集まって、犯行現場を荒らしてしまうところなんて、笑えるけど、実際はそうなんだろうし、レイプシーンの臨場感と残虐さには目を覆いたくなるほど。都会からきた刑事に淡い初恋を抱く女学生のエピソードは?と思ったが、それも後になって効いてくる。そしていろんな可能性を秘めたエンディング……下手なホラー映画よりずっと怖い。


まだ今年になって3ヶ月だが、今から宣言。個人的ベスト10の中にこれは絶対に入れ たいっ! 猟奇的殺人事件で未だ犯人が捕まっていない実話を元にした物語というの で、てっきりおどろおどろしい幕開けを予想したのだが、冒頭からコメディかと思う ほどクスクス笑いを誘う。かと思えば、刑事ドラマのお約束のような都会のエリート 刑事VS田舎の叩き上げ刑事の縄張り争いがあったり、お色気やら男同士の友情や ら……盛りだくさんな要素。一つ間違えば収拾つかなくなりそうなのに、脚本も手が けたポン・ジュノ監督の手際がお見事。約2時間10分、飽きるどころか、事件の解決 に執念を燃やす刑事2人にすっかり感情移入。それにしても、ソン・ガンホの面構え がこれほど魅力的に使われるとは……。ホント最高です。


ここのところ、“泣かぬなら、泣かせてみせよう『ラブストーリー』”みたいな過剰 な演出の韓国映画に辟易していたので、『オアシス』、『悪い男』、そしてこの『殺 人の追憶』のような骨太かつ、鬼畜系の韓国映画はいいッスねぇ。もの凄くダークな 社会派映画なんだけど、迫力ある映像にテンポいいストーリー展開、そして役者の演 技に圧倒され、見終わったあとは惚れ惚れするほどうっとり。いや、初めて東京国際 映画祭で見たときは、「長編2作目で、こんな映画を撮っちゃうんだ」と席が立てな くなるくらい、ポン・ジョノ監督の才能に衝撃を受けてしまった。ちなみに音楽は知 人の岩代太郎さん。ルックスと作る音楽のギャップが激しい人で、ホンマ、いい曲 作ってます。ご注目を。

イラスト:micao

 

 

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