中山 治美

中山 治美

略歴: 茨城県出身。スポーツ紙記者を経てフリーの映画ジャーナリストに。全国商工新聞、月刊スカパー!(ぴあ)などに執筆中。

近況: 映画祭で国内外を飛び回っているうちに”乗り鉄”であることに気づき、全国商工新聞で「乗りテツおはるの全国漫遊記」を連載。旅ブログ(ちょこっと映画)もぼちぼち書いてます。

サイト: https://tabisutekaisyu.amebaownd.com

中山 治美 さんの映画短評

全468件中1~5件を表示しています。 Next »
  • 青春
    彼らの”青春”の上に成り立つ暮らしを考える
    ★★★★

    ファストファッションがもたらす衣料品工場での過酷な労働環境に目を向けたドキュメンタリーはこれまでもあった。それは、実態を表沙汰にすることで私たちにエシカル消費を促す意義あるものに違いないが、一方で私たちに”可哀想な人たち”という印象を植え付ける。だが王兵監督のフラットな目線がそれを覆す。出来高制の職場では競ってミシンを動かし、男女が入り混じって寝食を共にする環境は恋も生まれればいざこざも招く。確かにここには彼らの青春がある。同時に、服の原価や彼らの給与を明確に提示しながらの賃上げ交渉場面をしっかりカメラに捉え、消費社会の皺寄せを晒すことも忘れない。強かに社会を映す王兵、健在なり。

  • 映画 ◯月◯日、区長になる女。
    まさに実写版『ウィッシュ』
    ★★★★

    選挙ドキュメンタリーにまた新たな秀作が仲間入り。だが多くが古い体質蔓延る日本の政治の根源を解明しようと、選挙戦の舞台裏で行われている駆け引きに焦点が当てられている中、本作は我々日本人がとうの昔に諦めてしまった民意を政治に反映させるプロセスを追った。本作の杉並初の女性区長となった岸本聡子氏や支援者は、自分たちの住環境を知らぬ間に壊す区政にNOを突きつけるために立ち上がった。まさに星に願うだけでなく声を上げることの大切さを伝えたディズニーアニメ『ウィッシュ』のごとし。その熱風に程よい距離を保ちつつカメラを回した劇作家ペヤンヌマキ監督の、芝居と異なる一面を見られたのも新鮮。

  • 99%、いつも曇り
    こんな映画を待っていた!
    ★★★★★

    アスペルガー症候群かもしれない監督が、実体験を投影しつつ、何かと”普通”を求められる社会で七転八倒する主人公を自ら好演。彼女を取り巻く人々も、様々なバックボーンを持った俳優たちがありのままの姿で出演している。多様性が求められる時代に、映画やドラマのキャスティングが旧態依然の日本において、国際基準の感覚を持った作品の誕生を心から歓迎したい。もっともマイノリティーの話かと思いきや、彼らが抱えている生きづらさや、人間関係のややこしさといった問題は普遍的であることに気付かされるだろう。その上で本作はより良き社会になるための一つの可能性を示す。殺伐としたこの時代、まさにこんな映画を待っていた。

  • ウィッシュ
    まさかのストレートなメッセージ
    ★★★★★

    今年の年末年始はアニメが百花繚乱。だが蓋を開けてみれば、『ペルリンプスと秘密の森』、『窓ぎわのトットちゃん』etc.....戦争をモチーフにしていたり、巨大な力に立ち向かう勇気を与えるようなメッセージが込められた作品ばかり。その真打ちが本作だ。しかも星に願うことをロマンチックに伝えてきたディズニーが、まさかの100周年記念作で、願うだけでは世界は変わらないことを強く伝えているのだ。日々のニュースで分かっているが、改めて世界は危機的な状況にあることを思い知らされる。ゆえに直球過ぎて物語に深みはないが、生田絵梨花の力強い歌声も相まって製作陣の”願い”は幅広い層に伝わるはずだ。

  • メンゲレと私
    思考とアイデンティティを奪う戦争の真の怖さ
    ★★★★★

    証言者は、ホロコースト証言シリーズ3部作の中で最も若い9歳~13歳にゲットーや強制収容所で過ごしたダニエル。メンゲレ医師の非人道的極まりない人体実験やカニバリズムなどを目撃し、その証言を裏付けるかのようにアイヒマン裁判の映像や米軍通信部隊が撮影した記録映像が差し込まれる。情報として知ってはいたとしても、その目が、その顔に刻まれた深い皺が、忌まわしい記憶を生涯抱えながら生きざるを得なかった者の苦悩を生々しく伝える。だが最も印象深いのは解放直後のこと。紙に絵や文字を思う存分書き、そこで自由を感じたという。自由であるはずの私たちに、深くその意味を問いかける言葉である。

全468件中1~5件を表示しています。 Next »
[PR]
おすすめ特集
映画アクセスランキング
  • Loading...
»もっとランキングを見る«
スポンサード リンク