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映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ (2017):映画短評

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ (2017)

2017年5月13日公開 108分

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ
(C) 2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

清水 節

孤独なふたりを結び付け、世界を肯定したくなる瞬間が訪れる物語

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 感覚的な映像で表わされる、無機質な都会の喧噪や焦燥――。石井裕也は、詩人・最果タヒの感受性豊かな言葉から、他者に無関心な東京の片隅であがく男女が反撥しながらも徐々に距離を縮める物語を、見事に肉化した。孤独なふたりは、生に懊悩煩悶し、死と隣り合わせの大都会で彷徨い続ける。ここでは不穏な予感を抱かせることばかり起きるが、それでも世界を肯定したくなる瞬間が訪れる。生きづらい街だからこそ、たやすく愛など信じようとはしないふたりは同質性を感じ、磁石のように引き寄せられたのだ。刹那に生を燃焼させることを繰り返し、若者の“なれの果て”である不器用な田中哲司の視点から、それでも生きようと叫びたくなった。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

肝はやはり池松壮亮の芝居

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

新人監督ならまだしも、大御所感溢れる石井裕也監督がこのテの青春映画を撮るとは意外。しかも、東京と函館、舞台は違えど、同じく孤独な男女の出会いを描いた『オーバー・フェンス』とのカブり具合が妙に気になる。ヒロインがキャバ嬢→ガールズバーのバーテンというだけでなく、キーパーソンとなる主人公の同僚が松田翔太→松田龍平とはいかがなものか。『オーバー・フェンス』に比べ、青さは否めないが、決して悪い映画ではないし、渋谷や新宿のゲリラ撮影や、『バンクーバーの朝日』では消化不良だった石井監督による新たな池松壮亮の芝居は堪能できる。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

ボーイ・ミーツ・ガール、「出会い」についての考察

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

石井裕也 meets 最果タヒ、の出会いから立ち上がったひと組の男女のお話。渋谷・新宿のゲリラ撮影が主となる「都市の映画」、ではあるが、二人をつなぐのは街への親和性ではなく違和感だ。一千万人の中から同じ周波数をキャッチして引き合う運命の糸を数値的な正確さで見せてくれる。

キーワードとなるのは「嫌な予感」。これは石井の初期作品『反逆次郎の恋』(06年)に近い。だがどんどん悪くなる世界でも、ひとつの縁が明日をもたらす。ギリギリの希望かもしれないが、それさえあれば生きていける。「どうでもいい奇跡」等について言葉を交わす宮下公園のシーン――どこか街頭演劇のような抽象性をまとった二人の光景が美しい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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