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没入度ハンパない!Netflix韓ドラ「マスクガール」何がそんなに面白い?

Netflixシリーズ「マスクガール」独占配信中

 Netflixオリジナルの韓国ドラマ「マスクガール」(全7話)が人気だ。8月18日に配信がスタートし、週間グローバルトップ10(8月21日~27日)のテレビ・非英語部門で1位を獲得。日本でも現在まで「今日のTV番組TOP10」で上位をキープし続けている。いったい何が面白いのか? その魅力をひも解いてみたい。(文:大山くまお)※本文には内容に触れる部分があります。

【画像】整形後はナナに!「マスクガール」場面写真

ブラックコメディーからサスペンス、壮絶な復しゅう劇へ

 主人公は歌やダンスで喝采を浴びたかったが、自分の外見のため挫折した女性、キム・モミ(イ・ハンビョル)。昼間は普通の会社員と過ごしているが、夜はマスクをつけたセクシーな配信者・マスクガールとして人気を得ていた。ある夜起こった思わぬ事件をきっかけに、モミに思いを寄せる同僚のチュ・オナム(アン・ジェホン)、オナムの母親のキム・キョンジャ(ヨム・ヘラン)らを巻き込んで物語は大きく動いていく。

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 「マスクガール」は全7話の短いシリーズだが、1話ずつ大胆に視点を変え、時制を行き来しながら、モミの壮絶な半生を描いていく。ドラマ「砂時計」で知られる国民的スターのコ・ヒョンジョン、アイドルグループAFTERSCHOOLのメンバーでもあるナナ、新人のイ・ハンビョルの3人が、時期ごとにモミを演じている。

 ブラックコメディー風に始まったと思えば、あっという間にサスペンスになり、血で血を洗う復しゅう劇へとなだれ込んでいく。展開のスピードとダイナミックさは他の韓国ドラマと比べても群を抜いている。最終回を観終わったときは、序盤のムードからはるか遠い場所へと連れて来られた気分になるはずだ。

女たちのノワール

 さまざまなジャンルが混在する「マスクガール」だが、おおまかに言えば韓国映画が得意とする「ノワール(犯罪)もの」にあたるだろう。犯罪に手を染めるのは、男たちではなく、女たちである。

 事件に巻き込まれたモミ、息子を溺愛するギョンジャ、モミと夜の街で知り合ったキム・チュネ(ハン・ジェイ)たちは、それぞれの理由で罪を重ねていく。見逃せないのは、男たちによる性加害や虐待などが背景にあることだ。女性たちの連帯(シスターフッド)も本作の大きなテーマだろう。

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「デカルコマニー」に注目

 注目してもらいたいのが「デカルコマニー」と呼ばれる演出法である。もともとは絵の具をつけた紙を半分に折って転写させる絵の技法を意味する言葉だが、韓国では「そっくりコーデ」などの意味で広く使われている。

 よく似ているものを対にして描く演出法で、大ヒットドラマ「愛の不時着」は韓国と北朝鮮をデカルコマニーとして描いていた(オープニング映像に端的に表れている)。映画『パラサイト 半地下の家族』は上流家庭と貧困家庭のデカルコマニーである(仮タイトルが「デカルコマニー」だった)。

デカルコマニー演出が活きたモミとチュネのダンスシーン - Netflixシリーズ「マスクガール」独占配信中

 本作ではモミとチュネがデカルコマニーとして描かれている。ダンスシーンなどにもデカルコマニー演出が活かされていた。モミとキム・ミモ(シン・イェソ)、モミとチュネの友情とミモとキム・イェチュン(キム・ミンソ)の友情、ギョンジャの息子への強烈な愛情とモミの子への愛情はいずれもデカルコマニーだ。

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 デカルコマニーは、それぞれ強く結びついているもの、あるいは対照的なものとして描く。オープニング映像やほかの部分にもデカルコマニーが仕込まれているので、ぜひ注意して見てほしい。

社会問題と本当のテーマ

 社会問題を取り込んでエンターテイメントにしてしまうのが韓国ドラマ、韓国映画の得意技だ。本作でも、根強いルッキズム、男たちの抑圧と性的搾取、ウェブに残されるデジタルタトゥー、学校でのいじめ、カルト化するキリスト教などの社会問題がそこかしこに散りばめられている。

 本作には『母なる証明』、『テルマ&ルイーズ』や『女囚さそり』シリーズ、複数のクエンティン・タランティーノ作品など、過去の映画を想起させる場面や展開がいくつもある。モミが1983年生まれの女性であることから、ベストセラーとなった韓国のフェミニズム小説とそれを原作にした映画『82年生まれ、キム・ジヨン』もリファレンスの一つに数えられるはずだ。

 ありふれた名前のキム・ジヨンが味わった社会の中の女性差別が多くの人の共感を集めるものだとすると、一風変わった名前のモミとチュネ(彼女もモミと同じ年)が経験したのは、社会から一歩踏み外したところで大きく口を開けて待っている地獄めぐりである。

 男社会の中の女性差別に対抗する女と女の結びつきだけでなく、個人としての女と女の対立と闘争もエクストリームに描く「マスクガール」は、ある意味、とてもリアルで人間臭い。女にだって欲望はあるし、恨みがあれば復しゅうしたい。そんな人間同士のぶつかり合いの果てに何が見えるのか。それこそが本作が描きたかったことだろう。

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