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宇野祥平『罪の声』で10キロ以上減量の役作り 亡き母への思い重ねる

宇野祥平
宇野祥平

 かつて日本を震撼させた昭和の未解決事件モチーフにした塩田武士のミステリー小説に基づく、映画『罪の声』(公開中)。本作で、犯人グループが身代金の受け渡しに使用した脅迫テープの声の主の一人を演じ、「泣ける」「圧巻の存在感」と注目を浴びている宇野祥平(42)。ドラマ「深夜食堂」やNHK連続テレビ小説「エール」など名バイプレーヤーとして活躍する宇野が、運命的な出会いともいえる本作で10キロ以上の減量に挑んだ役作りを振り返った。

【写真】宇野祥平登壇、大ヒット舞台挨拶の様子

 本作は、35年前に起きた昭和の未解決事件を追う新聞記者・阿久津(小栗旬)が当時の関係者の足跡をたどるなかで、京都在住のテーラー店主・曽根(星野源)をはじめ犯人グループの脅迫テープに声が使われた3人の人物にたどり着くさまを描く。脚本をドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」「MIU404」などの野木亜紀子、監督をドラマ「空飛ぶ広報室」「重版出来!」などで野木と度々組んできた土井裕泰が務めた。

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 宇野が演じるのは、元滋賀県警の警察官・生島秀樹(阿部亮平)の息子・聡一郎。幼少期に姉・望(原菜乃華)と共に脅迫テープに声を使われ、知らぬ間に犯罪に加担させられ、現在は消息不明という設定だ。宇野のキャスティングは土井監督、那須田淳プロデューサーたっての希望。宇野はオファーがある前に原作を読んでおり、その時からこの聡一郎というキャラクターに惹かれていたという。

 「初めにお話をいただいた時点ではまだ『罪の声』とは知らなかったんです。ただ未解決事件にまつわる作品ということだけ聞いていたので『もしかしたら』と思っていました。正式にオファーをいただき『罪の声』で生島聡一郎役だと聞いた時には本当にビックリしました。それは同じ関西生まれ、関西育ちで同世代の、でも全く違う人生を歩んできた生島聡一郎という人物になぜか自分を重ねていたからです。僕は早くに母親を亡くしまして、その母との失われた時間があったので、母親への後悔や失望のような気持ちが聡一郎への共感になったように思います」

罪の声
映画『罪の声』より宇野祥平演じるキーパーソンの聡一郎 (C) 2020 映画「罪の声」製作委員会

 原作、映画において、聡一郎は想像を絶する人生を歩んできた人物として描かれているが、宇野がまず行ったのが減量。宇野のクランクインは2019年3月だったが、オファーがあったのは2018年12月頃。心身ともに病んでいく聡一郎を演じるには「今の自分の体重ではない」と感じた。

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 「原作を読んだ聡一郎の印象が強く残っていました。小栗さん、星野さん演じる阿久津さん、曽根さんと会うときに、なんて声をかければいいのか、わからなくなるような、それまでの時間が滲み出てしまっているような、なんとも言えない聡一郎になるには今の自分の体重ではないと思いました。ありがたいことに早くオファーをいただいたので減量することが出来ました。本番ではお二人に聡一郎共々気遣ってもらい助けられました」

罪の声
脅迫テープに声を使われた聡一郎がたどってきた人生とは……

 劇中、涙を見せるシーンがあるが、声を殺して泣くという描写は脚本にはないもので「監督をはじめ皆さんに引き出してもらいました」と宇野。「そのシーンは聡一郎の初日のシーンでした。脚本でも最後に泣き崩れるとありましたし、野木さんの脚本が自由に演じられる余白があるものでした。服の質感や眼鏡の汚れや曇り、生活している部屋、使っている物、部屋に入る光、色んな部署の方々に聡一郎の生きてきた年月を作っていただきました。それがとても大きかったです。また土井監督とは、初めての仕事でしたが、僕より僕のことを知っているような深い洞察力で、その瞬間を引き出してもらいました」

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 ドラマ「深夜食堂」のめしやの常連客や朝ドラ「エール」の小学校教師といった小市民的なキャラクターから、ホラー&スリラー映画での狂気じみたキャラクターまで、幅広い役柄をこなしてきた宇野。今年公開の映画は12本に上るが、コロナ禍に見舞われ激動の1年となった。『罪の声』では有観客のイベントが実現し、11日に行われた大ヒット舞台挨拶には宇野も登壇した。「今年はいろいろあって、どう受け止めればいいのかわからないことばかりで、今もわからない状態です。今日はこうしてお客さんがいる状態で舞台挨拶をさせていただくことができてうれしいです。当たり前だったことが当たり前ではなくなっているので」と安堵の表情を浮かべる宇野。

 来年は、本作の土井監督と再タッグを組んだ『花束みたいな恋をした』(2021年1月29日公開)をはじめ5本の新作映画が待機中。なお、エゴサーチについては「怖くて見ていないんです」とあくまでマイペースだ。(取材・文:編集部・石井百合子)

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