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『羊の木』世界初上映!錦戸亮は「天才的な普通の人」

釜山国際映画祭『羊の木』ワールド・プレミアに登壇した吉田大八監督
釜山国際映画祭『羊の木』ワールド・プレミアに登壇した吉田大八監督

 現地時間15日、第22回釜山国際映画祭の「アジア映画の窓」部門で錦戸亮主演の映画『羊の木』(2018年2月3日公開)がワールド・プレミアとして世界で初めて上映された。同映画祭には初参加となる吉田大八監督が上映後に登壇し、観客からの質問に答えるQ&Aイベントが行われた。

 本作は、漫画家の山上たつひこが原作を担当し、同じく漫画家のいがらしみきおが作画した同名コミックの映画化。とある寂れた港町で「国家の極秘プロジェクト」として刑務所から出所したばかりの元受刑者の男女6人を受け入れたことで起こる、町の住人たちとの運命の交錯を描く。

 準備していたメモを取り出し韓国語で挨拶をした監督は、「日本でもまだ公開されていない作品です。世界で初めて観てもらうお客様と同じ会場にいるというのは初体験をこの場所で経験できたことにとても感激しています」と挨拶した。

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 Q&Aに入る前に、司会者が韓国語の映画タイトルについて説明した。見慣れない4文字となっているため、映画を理解するにあたり混乱するのではないかとのことで、「『羊の木』という実在しないものを韓国語にするため、専門書にある桔梗科の樹木の学名がつけられているそうだ」と現在の韓国訳になった経緯を説明した。続いて監督は、「昔、中央アジアにスキタイという街があり、その地に伝承されてきた『羊が実になっている木があった』という話からきています。「スキチアン・ラム(スキタイの羊)」とも「シープ・ヒューマン・ツリー」とも「ツリー・オブ・シープ(羊の木)」とも言います。どれも同じ意味ですので、日本語のタイトルは語感で決めました」と解説した。

羊の木
現地でサイン攻めにあう吉田大八監督

 主演の錦戸亮を起用した理由については、「彼とは今回初めて会いましたが、いい意味ですごく普通の人」との印象を述べた後、「映画には6人6様の個性が強いキャラクターが登場しますが、彼らの中心で普通の人として刻々と変化する状況にひたすら対応し続けます」と役柄を説明。続けて撮影時について「カメラの前に立つと俳優として切り替り、飄々としながらも、一つ一つの表情に観客の気持ちを乗せて物語を進めることができる天才的な普通の人だ」と評した。

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 演出の際にも驚いたことがあるとして、「ミュージシャンでもあるからなのか、演技について「もっと強く」とか「弱く」とかの感覚的な指示だけでも、「OKです」と言って演じてしまう。その場に一番フィットする演技をするので、とてもスムーズな撮影でした」と語った。

 観客から「錦戸が演じる月末が、登場人物6人が街にやってきたときに、毎回同じセリフなのはなぜか?」という質問には、「市役所の役人である彼は入居者を世話する部署なので、いつもと同じ仕事としてルーティーンに対応しています。しかしそれぞれの人が少し変わった反応をすることに気づくと、もしかしてこれはいつもの仕事とは違うのか? とだんだんわかってくる様子を観客に伝える狙いがあるのです」と語った。

 「多様な6人のキャラクターの中で思い入れのあるキャラクターは?」との質問には、「全てのキャラクターに愛情がありますが、作品を観るたびに興味がわくキャラクターが違ってくる」と言いながら少し考えた後、「今日は……元受刑者を受け入れて一緒に仕事をしている理髪店の店主かな、彼のシーンでみなさんも笑ってくださっていたこともあって、彼のことを考えている時間が長かった」と答えた。

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 町にやってくる6人の元受刑者は、それぞれ違う罪を犯しているが、どのように罪を設定したのかという質問に対しては、「原作にはもっと新住民が多く、殺人だけでなく窃盗や性犯罪や詐欺などがあった」とのこと。「今回は映画として2時間という時間の中で見せるために、殺人だけに絞りました」と明かした。また「人を殺したことがある人と、殺したことがない人との境目は、どのように見えてくるのかに興味があったので、その部分を考えて設定しました」と答えた。

 さらに殺人については、「弾みで殺してしまったのか、残酷な殺し方なのか、運悪く相手が死んでしまったのかなど、殺し方の違いによって、自分の目の前にいる殺人者に対して、どのような感情を持てるか、どのように付き合っていけるか、あるいは付き合うことができないのか、ということを詳細に表現したかった」と続けた。また、6人それぞれの罪に違いをつけたことによって、自分でも何が見えてくるのかを考えながら撮影していたことを明かした。

 最後に監督は、「少し変わった映画と思われたかもしれませんが、観ていただきありがとうございます。今日は世界で初めて、映画館で一般のお客さまに観てもらうという経験をみなさんと一緒に共有できて、すごく楽しかったです」との感謝の言葉を述べ、ワールド・プレミアとしての手ごたえを感じる観客からの熱心な質問が飛び交うQ&Aとなった。(取材・文:芳井塔子)

第22回釜山国際映画祭は10月21日まで開催

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