名画プレイバック

トランプ政権に揺れる不穏な今こそ観たい80年前の風刺コメディー『女だけの都』(1935年)【名画プレイバック】

2月17日21時37分
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『女だけの都』(1935年)より - (C)American Tobis Corp. / Photofest / ゲッティ イメージズ

 外国映画につけられる邦題には賛否両論分かれるものも多いが、これはうまくつけたと思う。原題“LA KERMESSE HEROIQUE(勇敢なお祭り)”が『女だけの都』(1935)となったフランス映画は、17世紀のフランドルの小さな町が舞台の艶笑(えんしょう)風刺劇。ハリウッドとフランスで活躍し、グレタ・ガルボ主演の『接吻』(1929)や『外人部隊』(1933)などを手がけたベルギー出身のジャック・フェデー監督の代表作だ。(冨永由紀)

 1616年、フランドル地方の町ボームは年に一度の祭りの準備に追われていた。町長や町のお偉方たちは着飾って集い、若い画家に肖像画を描かせている。町長夫人のコルネリアは使用人たちに次々指示を出しながら、幼いわが子の世話をし、16歳の愛娘・シスカの恋の相談にも乗り、と大忙し。すぐにわかるのは、男たちが見栄っ張りで呑気なこと。一方、女たちは商売に家事に子育てに……と働き者なこと。「バベルの塔」や「子供の遊戯」で知られる16世紀の画家ピーテル・ブリューゲルの絵画をそのまま映像化したかのように、あちこちでいろいろなことが同時進行していく様子が描かれる。『巴里の屋根の下』(1930)などルネ・クレール監督作で知られるラザール・メールソンの美術は見事だ。

 庶民の日常描写が続く中に突如、荒くれ男2人が馬に乗って現れ、彼らがもたらした「スペインのオリバーレス公爵と軍隊が町に立ち寄る」という知らせに町長や役人たちは震え上がる。軍による狼藉を恐れた男たちが思いついたのは、なんと町長が急死したことにして一行の滞在を断ろうというものだった。二言目には「女の出る幕じゃない」「国家存亡の危機に女はいらん」と吠えながら、打ち出してきたのは実に腰抜けな愚策。呆れ果てながらも、コルネリアは広場に集まった女たちに、天地創造の時から女の方が武装した男より強いと説き、「男たちに頼れないなら、私たち女だけでやりましょう」「素手でこの危機を乗り越えるのよ」と鼓舞する。そして女の機転と武器を駆使した懐柔作戦を指南する。

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 女傑のコルネリアを演じるのはフェデーの妻でもあるフランソワーズ・ロゼー。彼女をはじめ、町長役のアンドレ・アレルム、公爵役のジャン・ミュラー、司祭役のルイ・ジューヴェらが女の度胸と男の臆病さを達者な演技で描き出し、笑わせる。ストーリーもだが、目を見張るのは綿密に再現された17世紀のフランドルの風景だ。フェデーの製作意図の一つが故郷のいにしえの風景をスクリーンに蘇らせることだったというが、まさにブリューゲルの絵画の細部一つ一つをクローズアップしていくような映像になっている。

 男たちは“町長の喪に服す”という口実で後ろに隠れ、コルネリアたちが前に立ち、女だけの町として公爵たちを迎え入れる。思いがけないもてなしを受けた公爵は女たちに敬意を示し、一泊したら早朝には出発すると答える。一行にはイケメンの軍人たちに、猿2匹を連れた小人の道化や、見るからに生臭そうな司祭もいる。町の男たちは狭い一室に集まり、町長はベッドの上で文字通り死んだふりをして公爵の弔問を受ける。そんな彼らの姑息な芝居を見破った道化や司祭が見せる狡猾さが印象的。町の男たちから口止め料を受け取り、仕える公爵にも忠実な顔を見せ「これ以上悪事を働く前に戻ろう」と引き際を心得る。いわば、絶対に捕まらない本物の悪党だ。

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