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緒形拳主演の日本未公開映画や難解な新作を『タクシードライバー』の脚本家が語る

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怒れる脚本家、ポール・シュレイダー
怒れる脚本家、ポール・シュレイダー - Photo:Nobuhiro Hosoki

 映画『タクシードライバー』『ローリング・サンダー』の脚本家として知られる、鬼才ポール・シュレイダーが新作映画『アダム・レザレクティド』(原題)や自作について語ってくれた。

 シュレイダーは緒形拳主演の日本未公開映画『ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプター』(原題)についてのエピソードをまず話してくれた。「僕は『タクシードライバー』を自滅的な栄光として描いたつもりで、このテーマをもっと追求しようとしたときに、三島由紀夫の小説に出会ったんだ。撮影時、英語を話せたのはたった5人だけで、あの瞬間に日本を感じたね。ちなみに僕の娘も日本生まれなんだよ」。

 『アダム・レザレクティド』(原題)は犬の格好で司令官に従い、ナチス収容所のガス室送りを逃れたサーカス団芸人アダム・スタイン(ジェフ・ゴールドブラム)の物語。彼は、戦後にホロコーストの生き残りとして精神病院の患者となっていたが、ある日、地下室で犬のように鎖を首に掛けられた少年と出会い、本来の人間性を取り戻していく。

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 巨匠オーソン・ウェルズ監督も映画化を断念したという、ヨラム・カニュクによる原作にチャレンジしたのはなぜだろうか? 「オーソン・ウェルズがかかわったのは晩年の話で、ベティ・デイヴィスとともに製作する予定だったらしい。だが実現することはなかった。この映画の製作理由は、戦時中に犬として扱われていた男が、犬として扱われている少年に出会うことで、これまでのホロコースト作品になかった角度で、再生と生存を比喩(ひゆ)的な表現で描けると思ったからなんだ」。

 『タクシードライバー』をはじめ映画『レイジング・ブル』『最後の誘惑』『救命士』と過去4作品でマーティン・スコセッシ監督とコンビを組んできたシュレイダー。スコセッシ監督についてこう話してくれた。「スコセッシ監督と何度も仕事ができたのは、似た者同士だったからさ。教養もそれなりにあり、罪の意識に取りつかれていて、映画に狂っている、そしてぜんそく持ち(笑)。それに言おうとしていることも途中でわかるし、彼もきっとそうだろうな。そして、都会生まれのカトリック系イタリア人のスコセッシ監督と、田舎育ちのプロテスタント系オランダ人の僕という組み合わせで、映画的に絶妙なケミストリーが生まれるのさ! 彼と同じ境遇で生まれ育っていたら、名コンビとはいかなかったろうね(笑)」。
 
 さらに次回作のボリウッド映画について聞いてみた。「インドのデリーで、新メディア論を講義をしていたとき、ある人物からインドでの映画製作を勧められたんだ。しかし彼らが出すアイデアがとんでもなくヒドイもので、僕はニューヨークに帰ってしまった。だが、ふと思い起こしてみると、素晴らしいアイデアを自分自身が持っているのに気付いた。そこで再び彼らに連絡をして、製作に至ったわけさ。それは異文化を通したスリラー作品になる予定だよ」。

 インタビュー終了後「もっと『ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプター』の話が聞きたいなら」と個人用メールアドレスを教えてくれたシュレイダー。その気さくさは、作る映画とのギャップがとても大きく、心底驚かされた。(取材・文:細木信宏 / Nobuhiro Hosoki)

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