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ゴルフクラブは社会の縮図!格差社会をシニカルに描く『フィリピニャーナ / Filipinana』

10分の極上無料短編映画体験

ブリリア ショートショートシアター オンライン × シネマトゥデイコラボ企画

 梅雨を迎えた日本列島。気圧の変化で気分が沈んだり、体調を崩している方もいるかもしれない。そうではなくても、曇天が続くと気がふさぎがちになる人は多い。そんな時は、「サプリメントムービー」と評されることもあるショートフィルムをご覧いただきたい。薬にはならずとも、毎日の心の健康をサポートする力はあるだろう。世界のショートフィルムを無料配信しているオンラインシアター Brillia SHORTSHORTS THEATER ONLINE(BSSTO)。6月20日まで開催中の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(SSFF&ASIA)2022」とのコラボレーション企画として、昨年のグランプリ作品など過去受賞作品をお届けする。

※ご注意 この記事は作品についてのネタバレが含まれる内容となります。

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ゴルフクラブは社会の縮図!『フィリピニャーナ / Filipinana』

フィリピニャーナ
『フィリピニャーナ / Filipinana』より

『フィリピニャーナ / Filipinana』
監督 ラファエル・マヌエル
製作年 2020年
製作国 フィリピン、イギリス
上映時間 約24分
配信期間 6月1日~8月31日
SSFF&ASIA 2021 グランプリ「ジョージ・ルーカス・アワード」受賞作品
第70回ベルリン国際映画祭 銀熊賞(短編部門)

 全てを備えているゴルフコースは、社会構造を反映している。新入りの“Tee Girl” イザベルは、ルールを学ばなければならないのに、すでにシステムを覆す手段を探している。

 映画監督ジョージ・ルーカスの名前を冠した(本人の公認)、2021年ジョージ・ルーカス・アワード(グランプリ)受賞作品。舞台はフィリピンのリゾートゴルフクラブ。登場人物は、富裕層の客と、支配人とベテランスタッフと、主人公を含む若い“Tee Girl”たち。“Tee Girl”の仕事は、クラブ内の練習場(日本の“打ちっぱなし”みたいなところ)で、客のために球をセットするというもの。彼女たちの日常は、球を置いて、球を集めて、球を洗って、球を置く。その繰り返し。システムの一部として役割を果たす様は機械のようだけれど、映画の鑑賞者を含め現代文明の中で生きる人々を風刺する姿でもある。

 新人・イザベルは、ゴルフクラブというシステムの中にあって大いに逸脱をする。冒頭の登場シーンではコースの中で昼寝をしているし、休憩時間にクラブ内をうろついてタバコをプカプカ。客向けのお菓子をつまみ食いし、ベテランスタッフや支配人を前にしても物怖じしない。ただ、その表情はアンニュイで、ボーッと無気力な様子だ。

 システムに取り込まれていることはわかっているけれど、止むに止まれず事情で田舎から出てきて就職した。自由を失ったことへの諦念と、それでも求めてしまう自由な振る舞い。「人間らしさ」ってなんだろう? と深く考えさせられる1本だ。

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苦しい時に現れる人間の裏の顔『天空の下で / Under the Heavens』

天空の下で
『天空の下で / Under the Heavens』より

『天空の下で / Under the Heavens』
監督 グスタボ・ミラン
製作年 2020年
製作国 ブラジル
上映時間 約17分
配信期間 6月8日~9月7日
SSFF&ASIA 2021 オフィシャルコンペティション・インターナショナル部門優秀賞受賞

 若いベネズエラ人の母親マルタは、移民としてブラジルに向かう途中、赤ん坊を抱えて困っている若い夫婦に出会う。マルタの母乳が、互いの運命を永遠に絡ませることになる……。

 貧しい故郷を捨て、生きる糧を求めて国境を越える南米の移民の姿を描くシリアスなドラマ。終始不穏な雰囲気が漂う作品。見ず知らずの人に囲まれて一人国境を越える旅をするマルタと、力関係を利用して関係を迫ってくる移民ブローカーや、一見優しそうに見えてマルタの現金を狙う残忍な同行者。暴力に囲まれた緊張状態の中を、マルタは強く生き抜く。

 その強さの源になっているのは、「母」としての自覚だろう。故郷に子どもを残してきたのか事情は語られないが、他人の子どもに母乳を与える姿はすがすがしい。責任が人間を強くするとでも言おうか、自分のことばかりを考えている人間は弱く汚く、自分ではない誰かを思える人間は強い。そんなシンプルなメッセージを受け取る映画だ。

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出演は監督の家族!“実家感”伝わる良作『フレネルの光 / Return to Toyama』

フレネルの光
『フレネルの光 / Return to Toyama』より

『フレネルの光 / Return to Toyama』
監督 平井敦士
製作年 2020年
製作国 フランス、日本
上映時間 約25分
配信期間 6月15日~9月14日
SSFF&ASIA 2021 オフィシャルコンペティション・ジャパン部門優秀賞受賞

 フランスで夢を追うため、たくみは父の反対に逆らって日本を離れた。 7年ぶりに帰るふるさと富山。自転車を漕ぎながら取り残された町に懐かしい風景と思い出をつないでいく。亡くした父に会いに行けぬまま。

 どうやったらこんなにも実家の生活感をリアルに描けるのか!? と驚いた。それもそのはず、本作の舞台は監督の地元で、主人公以外の出演者は本物の家族や幼なじみという自伝的作品なのだ。魚をおろすのが得意なおばあちゃんに至っては、主人公の後ろにいるであろう孫(監督)との会話を記録しているわけで、これはドキュメンタリーと言っていいかも知れない

 制作チームは監督がフランスで仕事をしているメンバーたち。故郷に錦を飾るではないが、自分の仕事や自分の仲間を、家族に胸を張って紹介できるのは、とても豊かな時間であったろうと想像される。それが画面からも伝わってくる温かい映画だ。

 バラエティー豊かな作品が毎年作られている世界のショートフィルム界。国際短編映画祭SSFF&ASIA 2022では大スクリーンでショートフィルムを鑑賞できる貴重な機会だ。オンライン会場も設けられているが、お近くの方はぜひ会場に足を運んで多様な作品を味わっていただきたい。(大竹悠介)

今回紹介した各作品は「Brillia SHORTSHORTS THEATER ONLINE」で配信中。

Brillia SHORTSHORTS THEATER ONLINE公式サイト

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