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映画たて・よこ・ななめ見!

ウーマンラッシュアワー、暴君や変態……家族のDNAを感じる瞬間

映画たて・よこ・ななめ見!

 ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は白石和彌監督が描いた映画『ひとよ』を鑑賞しました! 2人が映画を観て、改めて感じた「家族と自分」の関係とは? (取材・文:森田真帆)

『ひとよ』

ひとよ
(C) 2019「ひとよ」製作委員会

 劇作家・桑原裕子が主宰する劇団KAKUTAの代表作を実写映画化。ある事件で運命を狂わされた家族が再会し、絆を取り戻そうとする。『孤狼の血』などの白石監督がメガホンを取り、『凶悪』などで白石監督と組んできた高橋泉が脚本を担当。

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反抗期進行中の村本は次男に共感!

ウーマンラッシュアワー
その気持ち、わかんねん。

中川:おかんが出所してきてさ、それに対する子供たちの三者三様の対応が面白かった。僕は、松岡茉優ちゃんが演じた長女の園子タイプ。おとんからの暴力が嫌やったから、おかんに感謝しているんやと思う。佐藤健さんが演じた次男の雄二は、暴力は耐えたらいい、それより自分の夢つぶされる方が嫌っていう強気タイプやん。

村本:いやぁ、オレはあの反応は強がってるだけだと思うな。抱きつくことと罵声を浴びせるのは同じ行動やと思う。甘えてんねん。攻撃しながら抱きつく感じ。おかーんつってタックルしてまうねん。

中川:僕は親目線から観た。おかん目線からね。おとんを殺してから出所してきて、子供達を守るためにしたってことを褒めてもらわんでもけど、「殴られるの我慢したらいいだけやん」って言われたらショックやわぁ。

村本:オレは子供がおらんから、息子の目線から観たけどさ、子供ってああいうことを言ってしまうのよ。おかんが傷つくであろうことを。そもそもしたことを否定されちゃう、みたいなさ。あえて親が傷つくこと言ってしまうのよね。オレもさ、「親父運動会来んかったよな」とか一撃必殺みたいに言っちゃって、親父の心がガラガラって傷つくのが聞こえるもんね。でも親父がオレの怒りに対して「飯食えよ、風邪引くなよ」とかいう優しさでくると、なんでオレはこんなことを言ったんやって涙流すんや。

ひとよ
(C) 2019「ひとよ」製作委員会

中川:この映画の中の子供たちはさ、誰一人なりたいもんになれんかったわけやん。美容師にならんかったり、いい奥さん捕まえられんかった長男も、小説家になれんかった次男もそやし。でも普通の世界でもそうやろ。別におかんがおとんを殺していても、そうじゃなくても、なりたいもんになれるわけではない。けど、この子供たちは言い訳として、おかんのせいにしちゃうっていうのはあるよね。まあ、そのせいにしたくなるのもわかるけどさ。

村本:芸人でも多いやん。親の都合で実家に帰る芸人もいるけど、そこでそいつは同期がテレビとかで華やかに活躍しているのを見て、親にあたってしまう。「親のために帰ってきたから、オレは自分の行きたい人生を生きられへんかった」っていう息子と、「あんたが自分で帰ってきたんやろ」っていう親みたいなやりとりあるやん。

中川:もしも◯◯やったらこうなのにって今を否定することになるよな。

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パラ兄の愛情を試し続ける村本の異常行動とは!?

ウーマンラッシュアワー
オレを愛してるか?

中川:あの松岡茉優ちゃんが演じている園子がめっちゃ甘えるやん。お兄ちゃんに愛を求めすぎてるところがあるよな。

村本:だってさ、あの兄弟も愛を知っていた時期がある訳やん。それが無くなってしまったからこそ寂しがる。安定して愛があるって思えたらいいんやけどな。オレは人の裏の裏を読んでしまうんよね。例えば映画でも、母親が子供のために父親を殺したって言っているけど、ほんまは子供を理由にしてるだけなんちゃうか? とかね。

中川:ひねくれてるわ! でも村本も、けっこう人の愛情を試すようなことするよな。それもそういう気持ちからきているんやろか?

村本:確かに、けっこう愛情を試すような行動するな(笑)。例えばオレらが2人で食事していて、途中でオレがトイレ行った時とかに、おまえツバ入れたんちゃうか?**とか聞くしな(笑)。

中川:いや、それなんなん(笑)。それ聞くと逆にトイレ行くの怖くなるわ!

ひとよ
(C) 2019「ひとよ」製作委員会

村本:子供の頃からの記憶で、今も鮮明に覚えてる。夜の12時以降に砂利の音がしたら親父やねん。砂利を踏む音が聞こえたらおかんが殴られるから、弟2人にヘッドホンして音楽を聴かせて3人で息を潜ませてた。ある日、一番下の弟がおかんの泣き声と親父の怒鳴り声が聞こえて、泣きながら下降りて行った時、さすがに末っ子の前ってことでピタッとケンカをやめてくれたの。罪悪感でね。そっからケンカがあるたびに末の弟を使って止めに行かせてたんやけど、一回、弟が起きんかったわけ。そこでオレは思ってん。オレはどれくらいかわいいんやろ? って。オレがやめてって言ったらやめてくれるのかな? ってさ。それでオレが降りて行ったら、親父にパーンって殴られてさ。そん時のショックったらすさまじいわけよ。だから今でも親父がたまに電話してきたら、どうせオレの心配をしているんじゃなくて、親父が寂しいからかけてきてるんやろって思ってしまうねん。まだどこか疑ってしまっている自分がいてさ。

中川:めっちゃ悲しい話。でも、やっぱり子供の頃の記憶って、ちゃんと覚えてるもんやな。特にそういう衝撃的なことって、子供は忘れられへんよな。

村本:そうやで! お前も子供の前でケンカとかしないようにせんと!

中川:いやそれめっちゃ思うわ。この映画を観てても、子供ってショッキングなことはいつまでも覚えている。だから夫婦ゲンカは子供が見てへんとこでするように心がける!

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ある恋をあきらめたわけ

ひとよ
(C) 2019「ひとよ」製作委員会

中川:鈴木亮平さんが演じた長男が、自分の家族の過去を奥さんに隠しているのつらかったな。

村本:家族のことを隠すってすごい罪悪感だけど、なかなか人に言えることではないから、あの長男の気持ちは切なかったけど、よく分かる。でも、あの嫁はめっちゃええ嫁やったな!

中川:せやねん。でも最初ちょっとこの嫁、あかん方の嫁ちゃうかなって思わんかった?

村本:思った思った。嫁役のMEGUMIさんがめっちゃいい味出してたよな。

中川:でもあのお兄ちゃんが実は一番苦しかったんちゃうかなって思うわ。

村本:まぁな。でも家族のリアルな部分を隠さないってすごく難しいやん。オレの場合は、離婚やったけどさ。それでも、やっぱり両親が離婚する時に真っ先に考えたんのは弟2人大丈夫かなって。だって名字も変わったりするやん。オレは当時大阪の吉本におったけど、2人のことを考えて一応おかんには弟が高校卒業するまで待ってくれって言ったもんな。とはいえ、ケンカばっかりの家族でいいのか、形だけの家族でいいのか、それを受け入れるのに時間かかったけどね。

中川:たしかに高校生ってめっちゃ繊細な時期やもんな。

村本:例えばさ、うちの実家ってめっちゃ汚いねん。今までおかんがやってたことができんくなってるから、親父の廃れた生活を見て愕然とするねん。昔、偶然ミタパン(三田友梨佳)と同じレストランにいたことがあって、密かに奢ったことがあってさ。テレビ局の関係者に「村本さんすごい紳士でした」って言ってくれてて、多分な、多分おれの予想だと、ミタパンと恋ができそうな感じやったんやけど、親父のことを考えたらミタパンに恋するのは無理やってなったわけ。芸能人のバックグラウンドってみんな東京生まれ東京育ちが多くてさ。でも、ミタパンにうちの親父紹介できひんなって思ってしまって。コンプレックスを感じてる自分にすごい罪悪感があるねん。あのお兄ちゃんも、本当は家族のことを伝えられない自分に一番苛立ってたんちゃうかな。

中川:いや、わかるんやけど。なんでミタパンと恋ができると思ったん? そこやで!

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2人が家族の血を感じてしまうとき

ウーマンラッシュアワー
めっちゃ殴っていた過去あり!?

村本:あと、大樹が嫁に手を上げてしまうシーンもつらかったな。オレにも自分の中にある親父の血を感じてしまうときがめちゃくちゃある。うちの親父は、お父さんが戦争で亡くなって、おばあちゃん1人に育てられて、お姉ちゃん2人にもかわいがられたから、わがままで暴君なんや。そんな親父の血を感じてしまうときがあるからめっちゃ共感した。

中川:僕もまさにそうやわ。親父がすごい女好きでお母さんが悩んでてん。でも昔、偶然親父の性癖を知ってしまった時に、オレと一緒や……って落ち込んだことがある。

村本:変態なDNAを感じてしまうって、お前も大概やな、ほんまに! 気持ち悪ぅ。オレは、おかんの自由なとこを継いでるかな。弟の結婚式にもゴルフ行ったし、急に留学にも行ったしな。いつも自分優先で生きるところは母親似やな。

中川:村本、たしかに大樹っぽいところあるかもしれへんな。だってオレもコンビ組み始めたくらいの頃はめっちゃ殴られてたで。口切れたこともあるし。

村本:でも一回だけおまえに思いっきり背負い投げされて、もうやめようって思ったけどな。

中川:オレに投げられた後、ハフハフ言って泣いとったもんな(笑)。

映画『ひとよ』は11月8日より全国公開
映画『ひとよ』公式サイト
(C) 2019「ひとよ」製作委員会 ※記事内容には個人の意見が含まれています

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ウーマンラッシュアワー・プロフィール

2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。

村本大輔 1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。

村本大輔ツイッター

中川パラダイス 1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。

中川パラダイスツイッター

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