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西郷隆盛は“顔”が豊か!大河で演じた役者は…鹿児島出身ゼロ!?

今週のクローズアップ

大河ドラマ「西郷どん」で主演を務める鈴木亮平 - 昨年11月のイベント時に撮影

 1月7日からスタートするNHKの大河ドラマ「西郷どん」の主人公・西郷隆盛を、鹿児島出身の筆者は口に出して「西郷隆盛」と言えない。もう亡くなっているとは知りつつも、「西郷さん」と敬意と親しみを込めて呼んでしまう。「西郷」と苗字で呼び捨て?……どうかご勘弁を。ふと振り返ると、鹿児島で生まれれば「西郷隆盛」について全く触れない人生を送ることは不可能だった。祖父母や両親、学校の先生も「西郷さん」と呼び、小学生時代の総合的な学習の時間では必ず「西郷隆盛」について調べている同級生がいた。

 そんな「西郷隆盛」だが、彼はどんな人物なのか。今の鹿児島にあたる薩摩藩で育ち第11代藩主・島津斉彬に見いだされた男、大久保利通と共に新政府を築いた幕末維新の英雄、日本最後の武士の内乱となった西南戦争を率いた人物……。さまざまな“顔”を有する彼はその知名度と悲劇的な最後から、多くの俳優に演じられてきた。「西郷どん」が始まる今、演じられてきた彼について触れてみる。(編集部・井本早紀)

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■大河ドラマで西郷隆盛を演じた役者

 西郷隆盛といえば、五分刈りほどの髪型で、顎がしっかりとして眉毛が太い、あの肖像画を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。鹿児島県民としては、あの眉毛の濃さはまさに「ザ★鹿児島」というイメージもあるのだが、かのエドアルド・キヨッソーネによる肖像画は本人ではなく、弟の西郷従道といとこの大山巌をモデルにしたものであることは有名だ。しかし“西郷さんの顔は誰も知らない”からこそ、さまざまな俳優が演じることができたのではないかとも思う。

鹿児島市にある西郷隆盛像

 ここで過去の大河ドラマ作品で西郷隆盛を演じてきた人物を出身地とともに挙げてみる。

1967年「三姉妹」観世栄夫(東京)
1968年「竜馬がゆく」小林桂樹(群馬)
1974年「勝海舟」中村富十郎(東京)
1977年「花神」花柳喜章(兵庫 ※東京説アリ)
1980年「獅子の時代」中村富十郎(東京)
1990年「翔ぶが如く」西田敏行(福島)
1998年「徳川慶喜」渡辺徹(茨城)
2004年「新選組!」宇梶剛士(東京)
2008年「篤姫」小澤征悦(アメリカ)
2010年「龍馬伝」高橋克実(新潟)
2013年「八重の桜」吉川晃司(広島)
2015年「花燃ゆ」宅間孝行(東京)
2018年「西郷どん」鈴木亮平(兵庫)

 10年に1度は幕末ものに挑む大河ドラマからの幕末愛を感じざるを得ないリストとなったが、意外にも大河で西郷隆盛を2度演じた経験があるのは、紫綬褒章も受章した名歌舞伎役者の故・中村富十郎さんのみ。なお富十郎さんは、テレビ東京のドラマ「竜馬がゆく」(1982)でも西郷隆盛を演じていた。

 しかしお気づきだろうか……? そう、

 鹿児島出身の俳優がいないのである

 「翔ぶが如く」当時にアゴ・眉毛含めて肖像画そっくりな憑依っぷりを見せていた西田も、福島県出身。あの「ザ★鹿児島」的風貌は、実は日本中に潜んでいる顔だったのか……? また後半の吉川晃司、宅間孝行には鹿児島出身者からこの言葉を贈ろう。「その西郷さん、イケメンすぎない?」

 だが本物の“顔”がわからないからこそ、配役に幅を持たせやすいという見方もできるのかもしれない。今年の「西郷どん」主演の鈴木は、『俺物語!!』『HK/変態仮面』などの肉体改造でもアッと驚かせてきた実力派。鹿児島出身者としてはまだ眉毛が薄い点が気になるが、彼がどのような西郷隆盛像を見せるのかも楽しみだ。

昨年12月時点での西郷さん役の鈴木亮平とその子供時代を演じる渡邉蒼。ふむ……
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■西郷さん、そして大久保さん

 大河ドラマから離れると、日本テレビで放送された「時代劇スペシャル 田原坂」(1987・西郷隆盛役:里見浩太朗)や、玉木宏石原さとみ主演の映画『幕末高校生』(2014・西郷隆盛役:佐藤浩市)など、またもや複数の西郷隆盛像が出てくる。またトム・クルーズ主演で日本でもヒットした映画『ラスト サムライ』に登場する渡辺謙ふんする勝元盛次は、西郷隆盛がモデルであるという説もある。

 そして「西郷隆盛」を語る上で絶対外せないのは、彼の盟友・大久保利通の存在だ。たまに西郷さんよりも目立っている大久保さん。イケメン系恋愛ゲームでは、西郷さん=絵ナシ、大久保さん=バッチリ攻略対象だった時もあった。なぜだ。文化庁のアニメミライ作品でもあったゴンゾ制作のアニメ「龍-RYO-」(2013)では大久保さんの声を西川貴教さんが当てていた。明治維新後を描いた『るろうに剣心 京都大火編』は……西南戦争後の話だから大久保さんしか登場しないか。しかしまあ、ちょいと西郷さんよりも人気ではなくて? そんな多くの光が当たる大久保さんは、明治維新後の政府で西郷さんとは異なる道を歩んだ人だった。

 さて、大河ドラマ「西郷どん」で、鈴木亮平が演じる西郷隆盛と瑛太がふんする大久保利通の出会いと別れの紹介をして、大河のスタートを楽しみにしたいと思う。後に西郷隆盛となる西郷吉之助の家と、後の大久保利通こと大久保正助の家には古くからのつきあいがあり、二人は幼なじみとして成長する。だが幼なじみという関係にもかかわらず、西郷さんを敬う大久保さんという図式があるのは、大久保さんが西郷さんより3歳ほど年下であったから。薩摩には郷中(ごじゅう)教育という先輩から後輩に教えるという独自の教育文化があったため、必ず年上を敬うべきというモットーがあった。またこの関係性は、薩摩藩主であった島津家でお家騒動が起こった際、大久保さんの父親がその影響で島流しにあったため、就職したてで職をなくした大久保さんの面倒を西郷さんが見たという、“恩”も関わっているともされている。

「西郷どん」大久保さん役の瑛太と、西郷さん役の鈴木亮平 - 昨年3月の「西郷どん」発表会見時

 さまざまな困難に立ち向かい、江戸の無血開城、明治政府の新設、廃藩置県、地租改正などに取り組んでいった二人の別れは、明治6年。朝鮮との国交を復活させるため、西郷さんは武力をもって朝鮮を開国させようとする「征韓論」の中心人物となる。だが、大久保さんと岩倉具視らによる岩倉使節団に反対を受け、征韓論は破れて西郷さんは鹿児島へと帰郷する。しかしこれにて別れ、ではない。余生は後進の育成に力を注ごうと私学校を設立した西郷さんにとって、思わぬところに「西南戦争」の火種が生まれてしまうのだ。そして「西南戦争」で、士族反乱の代表者として担ぎ上げられた西郷さんと明治政府の大久保さんは再び対立することになる。

 なお、西郷さんの征韓論については諸説あり、板垣退助らが主張したものとは異なる使節団派遣の論を展開していたというものもある。大河ドラマ「西郷どん」では、自ら血気盛んだった人物として描かれるのか、周囲に巻き込まれてしまった悲劇のヒーローとして描かれるのか、そこにも注目しておきたい。

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■オマケ:鹿児島弁の字幕、いらないかしら…?

 鹿児島弁は暗号にも使われたという話があるくらい、言葉そのものが難解だとされているが(例・標準語:頭が痛いです→鹿児島弁:びんたがいてちっど)、正直鹿児島県民としてはそれよりも波のように上下する独特なイントネーションこそ、その方言たらしめている要素だと感じている。

 昨年公開された岡田准一主演の映画『関ヶ原』は、島津惟新入道(麿赤児)&島津豊久(三浦誠己)率いる薩摩軍があまりにも素晴らしい鹿児島弁を発していたため、観客でありながら鹿児島県民以外には全く理解できないのでは……という謎の心配をしてしまったが、この現象が「西郷どん」でも見られるのか。西郷さんは下級藩士の家の生まれなので、なまりも強いお人なのだ。

 大河の過去作「翔ぶが如く」では、西田敏行による西郷さんのイントネーションはほぼ完ぺきだった。その西田はドラマ「西郷どん」では語りを担当している。彼に負けない鹿児島弁が、鈴木亮平と瑛太から出てくるのかという期待と共に、標準語の字幕をつけた方が……という心配も頭に浮かんでいる。

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