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憎み合う大女優たち!確執から誕生した怪作 - 『何がジェーンに起ったか?』

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Warner Bros. Pictures / Photofest / ゲッティイメージズ

 子供の頃は天才子役“ベイビー・ジェーン”として脚光を浴びた妹ジェーン。だが、大人になると大根女優呼ばわりされ、酒浸りになる一方、姉ブランチは実力を発揮して大スターとなった。さらに月日は流れ、下半身付随で車椅子の生活を送り、女優業は引退を余儀なくされていた。そんな姉の面倒を見るのはアル中のジェーンだ。果たして、姉妹の間に何があったのか? ジェーン役はベティ・デイヴィス、ブランチ役はジョーン・クロフォード。ともにサイレント期から活躍する往年のスターでオスカー女優が体当たりの熱演を見せる本作は、ヘンリー・ファレルの原作をロバート・アルドリッチが映画化した、おどろおどろしくも見応えのある怪作だ。(文・今祥枝)

 何よりもまず、顔を白塗りにした異様なメイクに、子役時代を思わせるラブリーな衣装のデイヴィスのビジュアルが衝撃的すぎる。もうこの出で立ちだけで、尋常ではない狂気が伝わって来るというもの。そんな印象を裏切ることなく、ジェーンのブランチへの虐待の数々は凄まじい。自力で歩くことができないのに2階に部屋があるブランチは、通いの家政婦がいなければジェーンに頼るしかなく、そのジェーンはブランチに対する嫉妬と憎しみをむき出しにして嫌がらせを加速させていく。あるシーンでは思わずぎゃー! と声をあげそうになったり、またあるシーンでは心の底からハラハラして手に汗を握ったり。ひたすら常識的で、ジェーンに深い憐れみの情を抱いているかのようなブランチの弱腰にやきもきするも、姉妹の間に真に何があったのかがついに判明する瞬間、なるほどと納得し、ゾっとしながらも悲しみを覚える。134分の白黒映画なんてキツイと思う人もいるだろうが、実にテンポよく、サクサクと物語は展開するので長さは感じないし、最後まで視聴者を引っ張るミステリーの要素もよく効いている。

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ベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォード Warner Bros. Pictures / Photofest / ゲッティイメージズ

 アルドリッチのタッチには皮肉なユーモアもあり、湿っぽくないところがいい。だが、何と言っても見どころはデイヴィス(当連載『イヴの総て』を参照のこと)とクロフォード(当連載『グランド・ホテル』を参照のこと)の共演にあるだろう。ともに1900年代生まれの二人は、対照的なタイプの女優だったと言える。大きな瞳と個性的な顔立ちのデイヴィスは、悪女役で多くの当たりを出した一方で、実に幅広い役柄を演じて2度のオスカー受賞、生涯ノミネートは11を数える。この記録は1982年にキャサリン・ヘプバーンが更新するまでデイヴィスが保持していた(現在はメリル・ストリープが最多ノミネート記録を更新中)。“映画のファーストレディ”とも呼ばれ、誰もが尊敬する演技派の大女優。一方のクロフォードは、ダンサーからMGMのスターとなり、その美貌とカリスマ性、奔放に生きる女性のイメージが人気を博し大スターとなった。

 対照的なタイプと書いたが、不仲でも有名だった二人には多くの共通点がある。ともに進歩的な考えの持ち主で、あきれるほど気が強かった。数々の武勇伝や逸話を持つ二人は、そうした伝説も含めて大女優だったわけだが、当時のハリウッドのスター・システムや圧倒的な男性優位社会において、果敢に闘いを挑んだ女優の先駆けでもあった。デイヴィスはワーナー・ブラザースとの確執を経て、一時期はキャリアが落ち込んだ1950年代に20世紀フォックスの『イヴの総て』で再び脚光を浴びた。クロフォードも人気に陰りが見える中、自らつかみとったワーナー・ブラザースの『ミルドレッド・ピアース』(1945年)で実力を証明してオスカーをつかみ取った。だが、1960年代には仕事のオファーはほとんどない状態に陥っていた。そこで、お互いのネームバリューといがみ合っていたこれまでの確執も話題性抜群とばかりに、50代で再起をかけて初共演を果たしたのが本作なのだ。この辺りの舞台裏と二人の確執については、オスカー女優のジェシカ・ラングスーザン・サランドンが火花を散らす秀作ドラマ「フュード/確執 ベティ VS ジョーン」(2017年)に詳しいので、本作と合わせて観ることをお勧めする。

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2人の確執を描く海外ドラマ「フュード/確執 ベティvsジョーン」はBS10 スターチャンネルにて毎週金曜よる11:00ほか日本独占放送中 (C) 2017 Fox and its related entities. All rights reserved.

 これまでのキャリアを汚すのかと周囲に止められたというほどのデイヴィスの役づくりはインパクトがあり、絶賛されオスカー候補にもなった。だが、静かに怯えるクロフォードの演技が、本作の成功を支えている重要な要素であることもまた事実である。現在では自分のプロダクションを率いて、企画から製作を手掛けて主演を務める女優も目立ってきているが、当時としてはどれほどの強い気持ちでいなければ、50歳を過ぎた女優がこうしたやりがいのある役を演じる機会を得ることが難しかったか。現在のハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ、パワハラを長年公然の秘密として続けていた醜聞を見るにつけても、この時代にハリウッドで女優がサバイブすることがどれほど困難であったかは推してしるべし。

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撮影現場のひと時、にこやかなデイヴィスとクロフォードだが…… Warner Bros. Pictures / Photofest / ゲッティイメージズ

 デイヴィスとクロフォードは現場でモメにモメたが、そうした背景はすべて作品の中に良い形で昇華しているようにも思う(綺麗事に捉えすぎているかもしれないが)。かつての人気子役と、かつての大女優。ジェーンもブランチも、時代に忘れ去られてしまったかのように隠遁生活を送りながら、自分がもっとも輝いていた時代を懐かしむ姿は胸に刺さる。それはそのまま、デイヴィスとクロフォードの心情を表すものでもあるだろう。同時に、「私は絶対にこうはならない」と捨て身で本作に臨んだ二人の、各々の意地とプライドがぶつかり合うかのような演技合戦には真実味があり、だからこそ鬼気迫るものがあると言えるかもしれない。そんなデイヴィスとクロフォードの確執が、実際にはどうだったのかはもはや本人たちにしかわからないことだが、「わたしたち、無駄に憎み合っていたのね」というジェーンのセリフが、いつまでも深い余韻となって胸に残る。

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