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何が違うの?新旧『猿の惑星』シリーズの描き方の共通点と相違点

 SF映画の金字塔というべき1968年のオリジナル版『猿の惑星』をベースにしつつ、リブートされた21世紀版『猿の惑星』シリーズも、10月公開の『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』でついに完結する。この3部作はオリジナル版『猿の惑星』と世界観を共有しているが、そこは21世紀の映画だけにアップデートされた部分もある。どこが、どう同じで、どう違うのか? シリーズをより楽しむために、そんな要素を改めて検証してみよう。(文・相馬学)

『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』
オリジナル版へとつながるリブート版第3弾『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』より- (C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
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新シリーズはオリジナル版『猿の惑星』の前日譚

 まずはオリジナル版のおさらいを。宇宙飛行士が長年の飛行の果てにたどり着いたのが、人類が知能を持ったサルに支配されている星、そしてその星は1200年先の地球だった……という物語。人類は核戦争に自滅の道を進んでしまい、これに変わってサルが力を得たという設定だ。そこには人間の愚かさへの痛烈な風刺が含まれていた。ちなみに、同作はその後シリーズ化され、1973年までに全5作が作られたが、いずれの作品も人間のごう慢さを皮肉な目線でとらえている

オリジナル版シリーズ5作品

  • 猿の惑星(1968)
  • 続・猿の惑星(1970)
  • 新・猿の惑星(1971)
  • 猿の惑星・征服(1972)
  • 最後の猿の惑星(1973)
『猿の惑星』
SF映画の金字塔!『猿の惑星』より-(C)20th Century Fox/Photofest/MediaVast Japan / ゲッティ イメージズ

 次に21世紀のリブート版を振り返ってみよう。2001年にティム・バートンがオリジナル版をリメイクした『PLANET OF THE APES 猿の惑星』は、完全に独立した作品なので今回は割愛させていただく。新シリーズは、2011年の『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』に始まり、2014年の『猿の惑星:新世紀(ライジング)』へ展開し、最新作『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』へと発展する。まず踏まえておきたいのは、この3部作が、オリジナル版『猿の惑星』の前日譚(たん)であること。つまりこの3部作では、どのようにして人間は自滅し、サルに支配されるようになったのか? を描いている。描かれる時代、それがオリジナル版と大きく異なる点だ。

『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』
人間とサルとの友情のゆくえは……『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』より-(C)Twentieth Century Fox Film Corporation / Photofest/ゲッティ イメージズ
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こんなところがオリジナル版から引き継いでいる

 新シリーズの第1作『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』は現代を舞台にしている。実験用の動物から生まれた知能を持つチンパンバー、シーザーが横暴な人間に対して反旗を翻し、仲間のサルたちを率いて蜂起。実はコレ、オリジナル版の旧シリーズの第4作『猿の惑星・征服』のストーリーから多大な影響を受けている。同作の舞台は、知能を持ったサルを人間が奴隷化している近未来が舞台だが、シーザーというチンパンジーが反乱を起こすのは一緒。どちらも、シーザーが人間に対して“NO!”と怒りの声を上げるのも共通している。

『猿の惑星・征服』
仲間のサルを救うために立ち上がることに……『猿の惑星・征服』より-(C)20th Century Fox / Photofest / ゲッティ イメージズ

 続く新シリーズ第2作『猿の惑星:新世紀(ライジング)』で描かれるのは、人間が伝染病によって絶滅しつつある近未来世界。山にこもり、サルのコミュニティーを築いていたシーザーは、人間の生存者グループを救うことになるが、それによって反人間派のサルたちを敵に回すことになる。一方では、人間の生存者たちもサルに世界の主権を奪われることを恐れ、軍隊を差し向ける。このストーリーも、シーザーが仲間の裏切りに遭うオリジナル版の旧シリーズの第5作『最後の猿の惑星』に似ている。『猿の惑星:新世紀(ライジング)』では人間を激しく憎むコバというサルが、リーダーのシーザーに対して反抗し対決するが、この要素は『最後の猿の惑星』にも含まれていた。

『猿の惑星:新世紀(ライジング)』
人間とサルの共存はできるのか?『猿の惑星:新世紀(ライジング)』より-(C)Twentieth Century Fox Film Corporation / Photofest / ゲッティ イメージズ

 そして、注目の新シリーズ第3作『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』だ。ここで描かれるのは人間とサルの戦争勃発から2年後の世界。冷酷非情な人間の大佐の手によって妻子を殺されたシーザーは、復讐(ふくしゅう)を誓って行動を起こす。オリジナル版の旧シリーズから脈々と続く“サルVS人間”の構図や、人間の愚かさといったテーマは受け継がれている。しかし、ここではさらに踏み込み、“サルVS人間”の根っこの部分にあるもの=“憎しみ”に切り込んでいく。復讐心に駆られたシーザーは、まさにその体現者。前作でコバの憎しみと対峙(たいじ)したシーザーは、今度はコバと同じような感情に突き動かされてしまうのだ。人間も愚かだが、それに変わって権力のある立場になろうとしているサルもまた愚かに成り得る。人間、サルを問わず感情を持つ者が抱く“憎しみ”とは、かくも厄介で、かくもむなしい。そんな争いの根本を、もっとも強く打ち出したのが本作なのだ。

『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』
人間とサル、感情の違いはあるのか?『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』より-(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
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特殊メイクから進化したものすごいリアルCG

 ここまではストーリーに沿って、オリジナル版と新シリーズの違いや類似点を上げたが、最後に技術面に目を向けてみよう。オリジナル版に登場するサルは、俳優に特殊メイクを施してつくられ、動きは人間に近いものだった。一方、CGが進化した新シリーズでは、俳優の動きや表情をデータ化してそれをリアルに映像化するパフォーマンスキャプチャーが導入された。

『最後の猿の惑星』
驚くべき特殊メイク!『最後の猿の惑星』より-(C)Twentieth Century Fox Film/Photofest/ゲッティ イメージズ

 シーザー役のアンディ・サーキスをはじめとする俳優たちはサルの動きを研究してそれを肉体的な演技に投影し、逆に表情は人間に近づけて感情を伝える。そんな一挙一動をコンピューターに取り込み、CGで作成したサルのビジュアルにはめこみ、よりリアルな質感を生み出すのがパフォーマンスキャプチャーの強みで、それは新シリーズが作られるほどに進化している。オリジナル版が公開されたとき、特殊メイクは当時の観客に大きな衝撃をあたえたが、新シリーズの心の葛藤を表現するアンディ・サーキスらの名演を伝えるパフォーマンスキャプチャーも映像の進化という点で目を見張らずにいられない。

『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』
リアルで感情豊かな演技は観る者を圧倒!『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』より- (C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』予告編はコレ! ↓

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