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アカデミー賞、日本映画3作品の勝算は?『君たちはどう生きるか』『ゴジラ-1.0』『PERFECT DAYS』それぞれ分析

第96回アカデミー賞

『君たちはどう生きるか』と『ゴジラ-1.0』のUS版ポスター
『君たちはどう生きるか』と『ゴジラ-1.0』のUS版ポスター - (C)2023 Studio Ghibli, (C)2023 TOHO CO., LTD.

 第96回アカデミー賞授賞式が目の前に迫った。本投票は先月末に締め切られ、オスカー予想の鍵となる主要な賞の結果も出揃って、後は結果を待つだけ。今年は日本の作品が3本候補入りを果たしたが、現地時間10日(日本時間11日)、これらの作品が賞を取る可能性はいかほどのものか。ここまでの経過や過去のパターンを参考に予想してみる。(文:猿渡由紀)

【画像】美しい…『君たちはどう生きるか』ギャラリー

 日本から候補入りしているのは、『君たちはどう生きるか』(長編アニメ映画部門)、『PERFECT DAYS』(国際長編映画部門)、『ゴジラ-1.0』(視覚効果部門)。この中で最も受賞の可能性が高いのは、『君たちはどう生きるか』だ。

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 宮崎駿監督によるこの最新作は、オスカーと投票者が一部かぶる英国アカデミー賞でアニメ映画賞を受賞。投票者がまるでかぶらないロサンゼルス映画批評家協会、ニューヨーク映画批評家サークル、ロンドン批評家サークル、ゴールデン・グローブなどでも、この部門の賞を受賞してきた。宮崎氏は日本国外でも強い尊敬を集めており、これが最後の作品かもしれないということも、業界人の間でよく知られている。アカデミーからはすでに功労賞ももらっているが、今一度大きな拍手を送りたいという思いを持つ投票者は少なくないと思われる。

 とは言っても、ダントツのフロントランナーというわけではない。『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』という強力なライバルがいる。オスカーを受賞した『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編である今作は、1作目同様、画期的なビジュアルと多様性溢れるキャラクターで、興行面、批評面ともに大成功。とりわけ北米内での評価が高いことを反映し、北米の投票者が大多数を占めるプロデューサー組合(PGA)、放送映画批評家協会、ナショナル・ボード・オブ・レビューから賞をもらってきた。さらに大きいことに、アニメ界のアカデミー賞とされるアニー賞でも『君たち~』を制している。

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 アニー賞のノミネーションが発表された時には、最多部門で候補入りした『ニモーナ』の巻き返しもありえるかと思われたが、今の段階では『君たち~』と『スパイダーマン~』の一騎打ち。だが、近年、意図的にアメリカ国外の投票者を増やし、アカデミーが国際化したことは、『君たち~』に有利に働きそうだ。

PERFECT DAYS
日本代表としてノミネートされた役所広司主演、ヴィム・ヴェンダース監督作『PERFECT DAYS』 - (C) 2023 MASTER MIND Ltd.

 一方、役所広司主演作『PERFECT DAYS』の勝ち目は、残念ながら薄い。国際長編映画部門はイギリス映画(ただし言語はドイツ語)の『関心領域』でほぼ決まりだからだ。というのも、『関心領域』は作品、監督、脚色、音響部門にもノミネートされているのである。

 過去を振り返ると、『ドライブ・マイ・カー』『ライフ・イズ・ビューティフル』『愛、アムール』など、主要の部門にも食い込んだ外国語の映画は、少なくともこの部門(旧・外国語映画部門、現在の国際長編映画部門)を必ず押さえている。『ライフ・イズ~』はこのほかに主演男優賞、作曲賞を受賞、『パラサイト 半地下の家族』は作品賞まで獲った初めての外国語の映画だが、『関心領域』も複数部門での受賞はありえる。

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 この2本に比べて、『ゴジラ-1.0』の運命は予想が難しい。投票者が何をより重視して票を入れるのかが見えないからである。

 この部門のほかの候補、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』『ナポレオン』は、いずれも製作予算2億ドル(約300億円・1ドル150円計算)超えの超大作。もう1本の『ザ・クリエイター/創造者』はメジャースタジオのSF映画にしては控えめな8,000万ドル(約120億円)。そこへきて、日本映画である『ゴジラ~』はなんと1,500万ドル(約23億円)程度とされている。

ザ・クリエイター/創造者
『ザ・クリエイター/創造者』には渡辺謙も出演 - Walt Disney Studios Motion Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 『ゴジラ~』の映像は迫力満点で、そんなに安く作ったと知ったら、多くの投票者は感心するだろう。だが、お金をかけまくっても現在における最高レベルのテクノロジーを駆使した作品を評価する人もいるかもしれない。その中間である『ザ・クリエイター~』は、おそらく『ゴジラ~』にとって最大の強敵だ。オリジナルのストーリーでスタジオにとってはリスクが大きいことからあまり予算をもらえなかったため、非常にクリエイティブかつ柔軟なやり方で最大の視覚効果を狙った『ザ・クリエイター~』は、視覚効果協会賞を5部門で受賞している。一方で『ゴジラ~』は1部門のみでの候補入りで、受賞は逃した。

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 しかし、『ザ・クリエイター~』を手掛けたギャレス・エドワーズは大のゴジラファンで、2014年の『GODZILLA ゴジラ』を監督した人でもある。『GODZILLA ゴジラ』『ザ・クリエイター~』には渡辺謙も出演しているし(エドワーズ監督から2度起用された俳優は過去に彼のみ)、もしこちらに転んだとしても、日本に縁のある受賞ではある。

 最後にもうひとつ、日本出身のカズ・ヒロ(旧・辻一弘)が、『マエストロ:その音楽と愛と』でメイク・ヘアスタイリング部門に候補入りしている。『マエストロ~』は、やはりオスカーでこの部門に候補入りした『オッペンハイマー』『哀れなるものたち』を制してメイクアップアーティスト&ヘアスタイリスト組合賞(時代ものまたはキャラクターメイクアップ部門)を受賞しており、オスカーも押さえる確率は高い。その通りになれば、カズ・ヒロにとって『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』『スキャンダル』に続き、3度目の受賞となる。

 現地時間10日、黄金の像を手にして微笑むのは誰だろうか?

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