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『エブエブ』監督、一番大変だったのは「どれだけクレイジーだとクレイジーすぎるのか見いだすこと」

ソーセージ指ユニバースでのエヴリン(ミシェル・ヨー) - 映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』より
ソーセージ指ユニバースでのエヴリン(ミシェル・ヨー) - 映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』より - (C) 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.

 映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の監督コンビ“ダニエルズ”ことダニエル・クワンダニエル・シャイナートがインタビューに応じ、クレイジーな本作をどのように形にしていったのかを明かした。

【動画】アカデミー賞最有力!『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』予告編

 アメリカで破産寸前のコインランドリーを経営している中国系移民の主人公エヴリン(ミシェル・ヨー)が、ひょんなことからマルチバース(並行世界)に意識を飛ばすことができるようになり(=バース・ジャンプ)、カンフーマスターをはじめとした“別の宇宙の自分”の力を得て悪と対峙する姿を描いた本作。ハチャメチャなSFアクションコメディーでありながら、一人の女性、そして家族の感動的なドラマにもなっており、そのバランス感覚が絶妙だ。

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 シャイナート監督は「僕たちは二人とも物理について話すのが好きで、マルチバース理論についても長い間話してきたんだ。だからダン(クワン監督)が最初に“バース・ジャンプ”について提案してきた時、どちらも量子力学方面については知識があったから、それをチャウ・シンチースタイルのファイトシーンのための構造として使えると思って興奮した」と本作の出発点を明かす。

 そこに他のさまざまなアイデアを吸収させ、より哲学的に、よりパーソナルなものにしていったとクワン監督は続ける。「移民の物語はマルチバースの中で本当にうまく機能するということに気付いたんだ。どちらも『こっちに進んでいたらどうなっただろうか』という別の人生の道筋を描いた物語だから。家族のドラマがアクション映画やロマンス映画に遮られ、そうしたものがインターネットのように混じり合い爆発して、最後には観客も主人公家族も混乱の中から抜け出して気持ちが上がって終わる。そういう映画にしよう、となったんだ」

ダニエルズ
“ダニエルズ”ことダニエル・クワン監督とダニエル・シャイナート監督

 撮影は新型コロナウイルスが猛威を振るう前に終了。パンデミックの期間は編集作業にあたっていた。クワン監督は「僕たちはうぶで、全体の構成は頭の中にあるから、どうやって編集すればいいかわかった気でいたんだ。実際に完成した映画は、脚本にあるものとそう変わらない。脚本でもシーンごとのカットがほぼ同じように記されている。だからすぐ編集できると思っていたんだ」と大きな思い違いをしていたと振り返る。

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 「だけど、一番大変だったのは、観客にちゃんとついてきてもらえるようにすることだった。どれだけクレイジーだとクレイジーすぎるのか、どれだけややこしいとややこしすぎるのか、どうしたらこの“奇妙な感覚”は僕たちが意図した通りのものだと感じてもらえるのか。僕たちの仕事の90%は全てをぎゅっとひとまとめにして、サウンドデザイン、音楽、VFXといったものを使ってそれを上手く働くようにすることだった。なぜならこの映画はとても奇妙で、それらなしだったらめちゃくちゃなんだ」(クワン監督)

 シャイナート監督は、プライベートでもダニエルズのいい友達だという編集者のポール・ロジャーズの仕事ぶりをたたえる。「僕たちですらこの映画にウンザリした時も、彼はそうじゃなかった。彼は全てのカットを観て、とても忍耐強く、クリエイティブに、さまざまな要素の正しいバランスを見つけようとしてくれた。観客に正しい量の“混乱”をもたらしながらも、彼らが圧倒されて劇場を後にしたりしないように。だからもし、僕たちが1年の微調整をしなかったら、成功はしたかもしれないけど、これほどいいものはできなかったと思う。最後の微調整が大きな違いを生み出したんだ」

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 そうして絶妙なクレイジーさを獲得した本作。バース・ジャンプの燃料となるのが“最高にバカバカしい行動”なため、劇中ではエヴリンも敵たちも数々の意表を突く行動をとってくる。現状でもかなりやりたい放題にやっているが、あまりにクレイジーすぎて入れられなかったものも存在するのだろうか?

 シャイナート監督は「クレイジーすぎたから入れられなかったわけではないけど、他のアイデアもあったのは間違いないよ。一つは、戦闘の途中で昼寝をしようとするもの。周りではし烈な戦闘が行われているのに、耳栓をして、呼吸を整えて……というね。だけどそれを入れられる時間はなかった」と明かす。

 クワン監督は「窓のさんで、(エヴリン役の)ミシェルがコカインを鼻で吸うみたいにほこりを吸い取るシーンもあった。とても美しいカンフー風のドラッグ吸引だ」とミシェルのバカバカしくも美しい姿を実演してみせる。「僕たちの中で最もダークな考えをしていたのは撮影監督(ラーキン・サイプル)で、彼はいろいろヤバイ提案をしてきたな。『ダメ! それはできない!』みたいな。彼は最もダークなユーモアのセンスを持っていたよ」と笑っていた。(編集部・市川遥)

映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は公開中

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