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西島秀俊&内野聖陽「何食べ」アドリブの裏側

『劇場版 きのう何食べた?』メイキングより。内野聖陽をスマホで撮影する西島秀俊
『劇場版 きのう何食べた?』メイキングより。内野聖陽をスマホで撮影する西島秀俊 - (C) 2021 劇場版「きのう何食べた?」製作委員会 (C) よしながふみ/講談社

 現在公開中の西島秀俊内野聖陽ダブル主演による『劇場版 きのう何食べた?』。累計発行部数840万部(電子版含む)を突破する、よしながふみの大ヒット漫画を実写化し反響を呼んだ深夜ドラマのその後を描く本作には、ドラマ版と同様、西島と内野のアドリブが取り入れられている。シリーズを通じて信頼関係を築いた2人の息の合った掛け合いが見られるが、こういったアドリブシーンはドラマから続投する中江和仁監督いわく「緻密な計算」のうえに成り立っているのだという。

【写真】超仲良し!西島秀俊&内野聖陽『劇場版 きのう何食べた?』撮影風景

 ドラマ版は、2LDKの住まいで同居する料理上手で倹約家の弁護士シロさん(西島)と、人当たりのいい美容師ケンジ(内野)の悲喜こもごもを、豊かな食卓シーンを交えて描くもので、2019年4月クールにテレビ東京系列にて放送されると、Twitterの世界トレンド1位になったほか見逃し配信の再生数が全12話100万回再生を超えるなど歴代最高記録を更新。翌元旦にはスペシャルドラマも放送された。劇場版で描かれるのは、ドラマの最終回でシロさんが両親にケンジを紹介したのちの展開。シロさんがケンジへの誕生祝いとして提案した京都旅行をきっかけに、「誤解」をキーワードにしたストーリーが紡がれる。

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 西島と内野への演出について、もともとドラマ版のときから「細かくは言わなかった」という中江監督。スタッフ、キャスト共にアイデアを出し合って進めるというのが本シリーズの特徴だ。「例えば、劇場版では京都旅行の中で浴衣を着る、着ないというシロさんとケンジのやりとりや、自宅でのこんにゃくのダジャレ。そういったアドリブのシーンをいくつか入れているんですけど、アドリブを入れる法則というのがある程度あって、一つはケンカなど重いシーンの後。シーンを軽くしないと引きずってしまうので。あとは、料理のシーンなど話の邪魔をしないところですね」

 アドリブを入れる前には西島、内野と話し合いをしたうえで何回かリハーサルを行い、本番に臨む。その中では一体どんなやりとりが繰り広げられているのか。「内野さんはいろいろアイデアを持っていらっしゃるんですけど、大体やり過ぎるんです(笑)。この作品ってBLものの中でもライトで、キスシーンもないですし、手をつなぐこともほとんどないですよね。でも内野さんは夜の生活を匂わせてくるので、逸脱しすぎた場合には軌道修正をしています(笑)。観ている方には笑わせるために撮っているように見えると思うんですけど、ちゃんとアドリブを入れる意図があり、テストと取捨選択のもと綿密に再現された芝居なんです」

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 なお劇場版にも、もう一組のカップル、小日向大策(山本耕史)とジルベールこと井上航(磯村勇斗)が登場。ドラマと同様にシロさんとケンジを揺さぶる役割を担うが、山本も内野に負けじとアドリブを繰り出したという。

 「山本さんはドラマの時よりも遊び過ぎている感があったので、それを止めなければならないという。役になりきって自然に出てくるのであればいいんですけど、相手を笑わせようとしてくるので。山本さんご自身もわかっていて、『もう少し相手の心に届くように言ってくださいね』とお願いすると、『わかりました。真面目にということですね。はい、やります』と軌道修正してくださいました(笑)」

真似したくなる料理シーンも健在

 シリーズのお楽しみの一つが、普段はクールなシロさんが生き生きとする料理のシーン。時折、ケンジが料理することもあり、それぞれ演出が異なるのがユニーク。シロさんの場合はモノローグ、ケンジは独り言を言うスタイルだ。

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 「シロさんに関しては、ドラマの時も脚本上ではたまにセリフがあったんです。だけど西島さんと相談して全部モノローグに変えさせていただきました。僕と西島さんの間では、シロさんは料理をしながらしゃべることはないだろうという共通認識があったので。ただ、劇場版では8時間落し蓋をするメニュー(黒豆)があって、ケンジに『8時間』と言わせるために、例外的にシロさんに『独り言のように』とセリフを作りました。ケンジの場合はモノローグにすると冷静になり過ぎるというか声を出した方が合うだろうと。内野さんとは特に話し合うこともなく、ノリノリでやられていましたね(笑)」

 ところで、劇場版ならではの見せ場はどんなところにあるのか。中江監督いわく、劇場版ではドラマの時よりも撮影に時間を割けたことが大きく、それが後半のあるシーンで功を奏した。

 「シロさんが意を決して、ケンジに『おまえどこか悪いのか?』と尋ねるシーン。二人が長い芝居で向き合うシーンがヤマ場というか一番大変だろうと。それはお二人もわかっていたのでその前日にテストをしたんですよね。そう何回も本番ができるような芝居ではないので、何回か練習をして息を合わせて、翌日も練習をして撮影に臨みました。ですから、そのシーンに向けてのエネルギーというか、積み上げ方というのは劇場版という時間があったからこそできたように思います。リハーサルの時間がとれたのは大きかったです」

 「誤解」をキーワードに、恋人から一歩先に進んだシロさんとケンジのほろ苦くも心温まる日々を描く本作。今年は互いに映画、ドラマ出演が相次ぎ、同シリーズの安達奈緒子が脚本を務めた連続テレビ小説「おかえりモネ」での共演シーンも大いに話題を呼んだ西島&内野。満を持して公開された劇場版は、そんな2人の掛け合いの集大成とも言うべき1作となっている。(編集部・石井百合子)

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