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中山美穂、年齢を重ねて自由に…アイドル時代に抱いていた危機感

もっともっと観ている人のイメージを壊していきたい(写真:日吉永遠)
もっともっと観ている人のイメージを壊していきたい(写真:日吉永遠)

 近年、舞台やドラマ、映画などで個性的な役柄を演じ存在感を示している中山美穂。最新作となる映画『蝶の眠り』では、病と闘いながらもがき苦しむ50代の女性作家という、これまでの中山のイメージとは違う役柄を好演している。この新たなチャレンジの根底には、トップアイドルとして歌に女優に大活躍の10~20代当時から抱いていた「このままでいいのか」という危機感があったという。

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 中山といえば、1980年代に芸能界デビューして以来、主演ドラマや数々のヒット曲で時代をけん引したトップアイドルであり女優だが、当時から未来の自分の姿にはあるビジョンがあったという。

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 「数々のドラマに出演させていただいていましたが、自分の中では、引き出しがないゆえに、何をやっても同じに見えてしまうんじゃないかなという思いがあったんです」と当時を振り返ると、「例えばラブストーリーが多かったのですが、職業が違うだけで表現していることは同じになってしまっているのかなという不安は常に持っていました。『このままでいいのかな』と自問自答することが多く、殻を破って、もっといろいろな経験を積まなくてはいけないという危機感は強かったんです」と心情を吐露する。

 そんな思いとは裏腹に、リリースする曲はヒットし、ドラマも高視聴率を残すことが多く、自然と進む道は中山の前に出来上がっていく。その道を歩くことが必然の日々だった。「当時のイメージは周囲によって作られたものという思いもありましたが、壊したいという願望はあったものの、それを自分で壊すこともできませんでしたからね」と苦笑いを浮かべる。

 脈々と中山の心の中に流れていた「このままではいけない」という思い。そんなときに出会ったのが、岩井俊二監督の映画『Love Letter』(1995)だった。「自分の殻を破らなければいけないと思っていた時期にお話をいただけたのですが、すごく大きな出会いになりました」と一つのターニングポイントとなった作品で、『蝶の眠り』でメガホンを取ったチョン・ジェウン監督は『Love Letter』の中山の演技を観て、今回のタッグを熱望したという縁もある。

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中山美穂

 20代前半から「年を重ねることは楽しいことだ」と思っていたという中山。「人間って年と共に、内面からにじみ出てくるものがあると思うんです。それは芝居に生かせるだろうし、自然と役柄の選択肢が広がっていくと思っていました。その意味で、年齢を重ねてさまざまなことを経験することに怖さはありませんでした」。

 こうした考えは数年前から一層確固としたものになっていき、自身をより客観的に見られるようになったという。そしてある一手に打って出る。初舞台への挑戦だ。中山はお転婆でエキセントリックな女性を見事に演じ、新たな一面を見せた。「舞台(『魔術』)への出演は大きかったです。ずっとやりたいと思っていたのですが、機会がなくようやく立てたという感じです。同時に、芝居の世界は甘くないと感じ、もっと成長したいと思いました」。

 その後も精力的に女優活動を続け、本作では病に向き合う50代の女性という実年齢を超える役柄に挑んだ。中山はまさに彼女自身が話していたように、年を重ねることによって得られたであろう内面の強さや脆さ、苛立ちや包み込むような愛など、さまざまな感情が同居する女性を繊細かつ大胆に演じている。

 「パブリックイメージが崩れることは怖くないですか?」という質問に、「全く怖くはないです」と即答した中山。「もっともっと観ている人のイメージを壊していきたい」と目を輝かせて語った彼女の次の一手に注目したい。(取材・文:磯部正和)

映画『蝶の眠り』は5月12日より角川シネマ新宿ほかにて全国公開

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