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途中退席続出!「パリ人肉事件」の佐川一政を追った衝撃のドキュメンタリー映画

ハーバード大学で教鞭をとる人類学者でもあるルーシァン・キャステーヌ=テイラー監督
ハーバード大学で教鞭をとる人類学者でもあるルーシァン・キャステーヌ=テイラー監督

 1981年にフランスで起きた猟奇殺人事件「パリ人肉事件」の佐川一政に焦点を当てた話題作『カニバ(原題)/ Caniba』が第55回ニューヨーク映画祭で上映され、ルーシァン・キャステーヌ=テイラーヴェレナ・パラヴェル共同監督が、10月3日(現地時間)ニューヨークのリンカーン・センターにあるウォルターリード・シアターで語った。

【写真】二人の監督作『リヴァイアサン』

 本作は、2013年に脳梗塞で倒れ歩行が困難となり、実弟の介護を受けつつ年金暮らしをする佐川の生活にカメラを向け、弟との関係性を浮き彫りにしながら、過去の事件を通して佐川の心の根幹にある“カニバリズム”について追求した衝撃作。兄弟関係を描く中で、当時の事件を振り返りながら淡々と語る、戦慄(せんりつ)が走る佐川の言葉、そしてその内容から、映画祭では途中で退席する人も続出した。

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Caniba
過激すぎる事件の様子を語るヴェレナ・パラヴェル監督

 事件当時についてパラヴェル監督は「どのメディアでも、かなり大きく扱っていたわ。特に、パリ・マッチ誌は警察(鑑識)が撮影した彼の当時の自宅に残された女性の遺体の写真と、彼が(自身で撮影した)彼女の遺体の一部を食べている写真などが全て掲載されていたの」と過激すぎる状況を語る。

 だが、二人は最初から佐川を題材にした作品を撮る予定ではなかったという。「ある条件を出されて、(東日本大震災後の)福島を撮影する予定だったの。でも、複雑な題材で、その条件に見合った仕事がわたしたちだけでできるかわからなくて……。実際にできるか確かめるために福島を訪れようと、日本についてさまざまな書物を読んだわ。そんな時に、ハーバード大学で日本のピンク映画について教鞭をとっていた教授と出会って。ユニークなソフトポルノという題材にとても興味を持ったのよ」とパラヴェル監督。

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 そこで、実際に日本に行って多くのピンク映画の監督に会ってみたという。その中には(ピンクの四天王と言われた)佐藤寿保もいたそうだ。ピンク映画に魅了された彼女たちは、「失われかけているジャンル映画の一つだと思ったから」という思いから“自分たちのピンク映画”を作ることを決意。その後、佐藤監督作『眼球の夢』をプロデュースし、同作に出演した佐川に興味を持ったことで、今作へとたどり着く。

 撮影にあたり、佐川や彼の弟とは数回に分けながらも、2~3週間ほど共に過ごしたという監督たち。パラヴェル監督は「お互いを知り合う時間は結構あったわね。(撮影日は)毎朝、彼の自宅を訪れ、丸一日彼らと共に過ごしたの。わたしたちは日本語を話せないから、最初は弟が介護しているとは知らなかったわ。スタッフに訳してもらうこともあったけど、逆に自分たちで理解しようと、あえて訳してもらわないときもあったのよ」と言葉の壁にぶつかりながらも、積極的に関係を構築していったと話す。また、弟については「いつも佐川の後ろに立っていて、とてもミステリアスな人物だったけれど、徐々に映像画面を占めていくようになって、最終的には兄弟愛とライバル関係が進化していく感じだったわ」と撮影中にテーマを変更していったことを明かした。

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 ハーバード大学で教鞭をとる人類学者でもあるキャステーヌ=テイラー監督は、カニバリズムについて「カニバリズムは人類学の重要な題材の一つだが、僕たち二人はその専門家ではないんだ。人類学者は、カニバリズムのあった場所がいかに(慣習や風習などが)儀式化されていたかとか、文化によって大目に見られたりしてきたかなどを研究していて、実際に食人だった先祖たちは、(飢餓などにより)自分たちを犠牲にして、他の人々を生かそうとしていたこともわかっているんだよ。けれど、人類の発展により、食人文化がなくなり、人々の間でもシリアスな題材としてあまり取り上げなくなってしまったんだ」と嘆いた。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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