メル・ギブソン、10年ぶり監督復帰を決心させた銃を持たない兵士の勇気

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10年ぶり監督作で復帰! メル・ギブソン(提供画像) - Photo by Gregg Porteous / Newspix / Getty Images

 メル・ギブソンが10年ぶりにメガホンを取り、作品・監督賞を含むアカデミー賞6部門にノミネートされ2部門で受賞した『ハクソー・リッジ』は、第2次世界大戦中、武器を持つことを拒否し、沖縄戦で75人もの命を救った実在の衛生兵デズモンド・ドスを描く感動のドラマだ。『アポカリプト』以来となった久々の監督作にかける思いを、メルが米ビバリーヒルズのホテルで語った。

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 「10年ぶりだからね。ガレージに何年も置かれた車を動かすときみたいに、部品をチェックしたり、オイルを入れたり、始める前にいくつかのことをしないといけなかった。何をすればいいか忘れてしまっていたんだ。(赤ん坊のように)まず立ち、それからはって、歩いて、最後には走っているという感じだったよ」と語るメル。

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 『ブレイブハート』『パッション』などの傑作を手がけてきた名匠とは思えない言葉だが、今作をやると決めた理由は、主人公の想像を絶するヒロイズムに惹かれたからだと言う。「良心的兵役拒否者であるドスのストーリーにとても引きつけられたんだ。誰もが彼のことを臆病者だと思って迫害した。でも彼は、敵の砲火の中をはって行って、負傷者を助けた。武器も持たずにね。そんなことは怖すぎて僕にはできないし、ほとんどの人が出来ないだろう。まさにヒロイズムの頂点だ」。

 「戦争は、人間を動物のレベルに引き下げる。でも、動物のようになる必要はない。ドスは、アメリカ人だろうと日本人だろうと気にせず、負傷者を助けた。上官にやめろと言われてもやめなかった。戦争という無益なものの中で、勇気ある崇高な道を歩んだ人なんだ」。

 撮影現場で、少しだれ気味だった日本兵役のエキストラに気合を入れようと、「ここは君たちの土地なのに、彼らが侵略してきているんだ。彼らに土地を奪わせるんじゃない」と言うと、俄然、真剣になったと言う裏話も披露。彼にとって、第2次世界大戦を扱うのは初めてのことでもあり、沖縄戦を描くにあたってリサーチを重ねたという。「沖縄戦は、太平洋戦でもっとも過酷な戦いだった。沖縄の人々は子供と一緒に崖から飛び降りたりしたんだ。本当に悲惨なことだった。誰にとってもね」。

 そのうえでメルは、日本人に向けて、国籍にとらわれずにこの映画を観てほしいと語る。「まず、皆さんを楽しませ、それから、さらにインスピレーションを感じてもらえればいいなと思う。だから、まずはアドベンチャーとして観てほしい。そして、アメリカ人や日本人といった、どちら側というのではなく中立の立場で観てほしい。戦争はドイツでも起きたし、中東でも起きている。この映画も、世界のあらゆるところ、あらゆる人々に対して起きている戦争の真っただ中にいる体験を描いているんだ」。

 酒気帯び運転で逮捕され、警官に暴言を吐いたことをきっかけに、しばらくハリウッドから敬遠されていたメルだが、今作で再びトップ監督に返り咲いた。次回作はルネッサンス期のフィレンツェを舞台にしたメディチ家の話で、ロレンツォ・デ・メディチという実在の人物を描いた政治的な復讐劇になるそうだ。今年のアカデミー賞授賞式の感想を尋ねると、「候補になること自体が勝ったのと同じだよ」と素直に喜んでいた。(取材・文:吉川優子)

映画『ハクソー・リッジ』は6月24日より全国公開

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