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堤真一、プロ声優の技術に強いリスペクト 『鹿の王 ユナと約束の旅』単独インタビュー

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鹿の王 ユナと約束の旅

 2015年本屋大賞受賞の上橋菜穂子によるベストセラー小説を、『千と千尋の神隠し』『君の名は。』のアニメーターでこれが初監督となる安藤雅司がアニメーション映画化した『鹿の王 ユナと約束の旅』。本作で、堤真一が初めて声優に挑戦した。彼が演じるのは、かつて最強の戦士団を率いた頭だったという主人公・ヴァン。謎の病が侵食する世界で幼い少女と出会い、治療法を探す天才医師と旅することになるヴァンを声の演技で表現した堤が、その挑戦の裏側を語る。(取材・文:浅見祥子 写真:中村嘉昭)

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あっという間に読み終えた原作

鹿の王 ユナと約束の旅

Q:もともと原作を読まれていたそうですが、どんなきっかけで?

本屋に行くと、その日によってタイトルで選んだり、なんとなく面白そうだと思う表紙で決めたり、直木賞や芥川賞、本屋大賞受賞作を買ったり。この本の場合は面白そうだと、タイトルでたまたま決めたのだと思います。それでかなり長い作品ではありますが、どんどん興味を引かれ、ある種のミステリーの要素もあって、あっという間に読み終えました。

Q:アニメの声優は初挑戦ですね。

今まで声優の仕事とは縁がなかったんですが、今回たまたまお話をいただきました。正直なところ、それまで声優の仕事のことはあまり知らなくて、うまくできる自信もなかったんです。でも、原作を読んでいて面白いことは知っていたし、もしゆっくりと時間をかけてくださるなら、ぜひやらせていただきたいとお返事しました。だから「やっぱり時間がないので」と言われたら、そうですか……で終わるところでした(笑)。

Q:ヴァンの声は、どう想像していったのですか?

原作を読んでいるときはなぜか、体の大きい人というイメージがなかったんです。それで画を観て、あそこまでがっしりとしていて背が高いんだと思った。冒頭のヴァンは奴隷の身で、家族を失い、人生が終わったような状態です。彼が抱えたもの、背負うものは相当に重いものですが、あまり感情表現をする人ではない。なるべく腹の底から音を出すような感じにしよう、そう思いました。

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改めて感じた声優へのリスペクト

鹿の王 ユナと約束の旅

Q:アフレコの現場を体験した感想は?

監督は練習みたいに「一度、ちょっとやってみましょうか」と入り、「もう少しこんな感じ」などと演出してくださって。和やかで優しい人ばかりで、まずは現場にいることが楽しくなっていきました。声優さんともいろいろ話すことができて、助かりました。彼らのアフレコを「うわあ、うまいなぁ」と思いながら聞いていました。本当に、いい経験でしたね。

Q:アフレコはなにが難しいのでしょう?

やっぱり画とタイミングを合わせるのが難しかったです、自分の呼吸でやるわけではないので。実写で自分の声のアフレコをやるときは、演じたときの記憶がなんとなく蘇ってきたり、いちど撮影時の声を聞いたりできるので、そんなに手こずることはないのですが、声優の仕事は、とてもテクニックが必要だと感じました。

Q:画と合わせるコツは? 自分が演じるときと同じように、心情を理解すると画とタイミングが合ったりするのでしょうか?

これはもう物理的な問題ですね。画では口を閉じているのに、喋っていたらおかしいですから。そこまでにはセリフを言い切らなきゃいけないとか、ここで切らずに最後まで一気に……みたいなことを監督に言われたりしました。一緒にやってくださった声優さんは構えず、自然にスッと入っていくんですけど、どうしても僕は構えてしまってワンテンポずれたり、構え過ぎて速くなってしまったり。なかなか難しかったです。ただ画が完成してないところでは、「堤さん、好きな感覚で喋ってください。あとで画を合わせますから」と仰ってくださって、それはありがたかったですね(笑)。

Q:ヴァンはあまり感情を表現しない人で、しかも声だけでわずかな心情の変化を表現するのも難しそうですが?

声優さんはいろいろなトーンでそうしたちょっとした変化を、声だけで表現していきます。僕はどうしても、身体を伴わないとなかなか難しい。いまは声優さんがいろいろなところで取り上げられていますが、やっぱり本当に皆さんすごいんだなと思いました。

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大人に愛情を求める子どもの無邪気な姿は美しい

鹿の王 ユナと約束の旅

Q:ヴァンに拾われる幼い少女ユナがヴァンの背中にくっついて安心して眠ってしまうところなど、愛らしいですよね。

ああいう懐き方というのか、一見すると怖さもある大人に愛情を求める子どもの無邪気な姿は、どこか美しいですよね。子どもはお母さんがいなくなったらお母さんを探し求めますから、ユナみたいにすんなりとはいかないとは思うのですが。ヴァンは実際の父親でもないのですが、そんな風に甘えれると、やっぱりかわいいですよね。

Q:絶望していたヴァンは、ユナとの出会いで生きる力を取り戻していきます。その心境の変化を、演じながらどう感じましたか?

単なる復讐劇ではなく、彼女を守ること、彼女と生きていくこと、暮らしていくことを守ろうとする。そう変化し、思考の次元が変わっていきます。そのあたりは「もうちょっとリラックスした感じで」など、監督に細かく演出していただきました。

Q:「原作がお好きな方も、読んだことのない方にも楽しんでいただける作品」とおっしゃっていましたね。

原作を知る方はまず、あの世界にすんなり入れます。

Q:原作を知らないと、謎の病「黒狼熱(ミツツァル)」が広がった世界を描く物語が、コロナ禍の只中にある現実とリンクすることにドキっとするかもしれません。それで治療法を懸命に探す医師のホッサルの姿に心を動かされる気がしますが?

ホッサルは人を救うために、命を危険に晒してでも求めていきます。純粋に人を助けたいという意識が底にあるわけで、本来はなんでもそうなのかもしれません。科学や医学を志す、そういう目的や探求心を持つ人はどの時代でもいますし。もちろん、現代にも。変な駆け引きなどではなく、単純な正義感から生まれる人を守ろうとする力。これはやっぱり偉大なものなのだと感じてもらえればいいですね。

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サスペンスの要素が物語の面白さを加速させる

鹿の王 ユナと約束の旅

Q:完成した映画を観た感想は?

面白かったです。自分がやっているのを「大丈夫かな? 大丈夫かな?」と思いながらでしたけど(笑)。どんな作品でも、いろいろと反省することの方が多く、いい印象を持ちにくんですけど。もういちど観てみます。そうすればもうちょっと客観的になって、リラックスして観られると思うので。

Q:原作は本屋大賞を受賞して今回、アニメーション映画化されました。この物語が広く支持される理由はなんだと思いますか?

この作品は、自然と共に生きる人たちの強さが描かれ、その力と医学や科学という近代的なものとの本当の意味での融合を見出そうとする物語でもあります。そんなところに、魅力を感じるのではないでしょうか。それでいて誰と誰が、どう出会っていくのか? 敵対するか? いろいろと考えさせるサスペンスのような要素もあります。そうした面白さが、支持されているのだと思います。

鹿の王 ユナと約束の旅

「声優さんは本当にすごい」と深いリスペクトをなんども口にした堤真一。映画もドラマも舞台でも数多くの作品で活躍する大ベテランだけに、初めて体験という、それ自体が新鮮なものだったよう。「難しかった」を連発するが映画を観れば、そんな格闘を感じさせることはない。さすがの安定感で、空想上の人間に人間としての深みを与えている。

映画『鹿の王 ユナと約束の旅』は2月4日より全国公開

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