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テロを止めた普通の人たち!映画になった実話に驚愕

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(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC - - U.S., CANADA, BAHAMAS & BERMUDA c 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT INC.

 もし、あなたが世間からいきなり“英雄”扱いされたらどうしますか? 映画史に残る数々の傑作で主演・監督を務めてきたクリント・イーストウッドは近年、わたしたちのような“普通の人々”が不屈の意思を持って困難に立ち向かっていく姿をスクリーンに刻み続けています。衝撃に直面した人たちを、名匠はいかに映画化したのか? 最新作『15時17分、パリ行き』の公開が迫る今、名匠を惹きつけた逸話の数々と、そのこだわりを追います。

あの戦争で何が?男たちの信念!

硫黄島からの手紙』(2006)

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双方の立場から戦争映画を撮る、前代未聞の試みに挑んだクリント・イーストウッドと、栗林忠道大将を演じた渡辺謙 Warner Bros. / Dreamworks / Photofest / ゲッティ イメージズ

 第2次世界大戦でも屈指の激戦として語り継がれる「硫黄島の戦い」を、日本側の視点から描いた作品。イーストウッド監督は、アメリカ側の視点で兵士を描く『父親たちの星条旗』のリサーチを通じて知った日本軍守備隊・栗林忠道大将(渡辺謙)に惹きつけられ、2つの映画を同時進行で撮ることを決意しました。

 栗林中将が家族に宛てた手紙を集めた書籍「『玉砕総指揮官』の絵手紙』」(小学館文庫)や、硫黄島に限らない大勢の兵士のエピソードを基に、日系人のアイリス・ヤマシタが脚本を執筆。監督は脚本を頼りに、日本語の演技を自ら演出するという離れ業をやってのけただけでなく、アカデミー賞作品賞にノミネートされる傑作に仕上げます。そこで描かれた栗林大将は、精神主義を否定する、優秀で合理的な軍人であると同時に、兵士を大事に扱い、常に家族を思う、優しい普通の父親でした。

 監督は劇中、妻とまだ見ぬ赤子を思い続ける元パン屋の青年・西郷(二宮和也)や、官憲の清水(加瀬亮)といった一般兵たちも、死を恐れて戦地を駆ける、普通の人々として描いています。本作について「僕は日本語のできない日本人監督なんだよ」と語っていた監督は、「日本国民は改めて彼らに感謝する必要がある。勝敗に関係なく彼らの犠牲を払ったからこそ現在がある」と兵士たちへのリスペクトを述べました。

殺人者か?父親か?160人を射殺した男のトラウマと家族愛!

アメリカン・スナイパー』(2014)

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英雄にして大量殺人者、そんな父親の苦悩を描く Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

 イラク戦争において160名以上の敵を射殺した、米軍最強といわれる狙撃手クリス・カイルの自叙伝を映画化した作品。甘いマスクのイケメン俳優ブラッドリー・クーパーが、タフな軍人役に挑戦した作品としても話題を呼びました。

“最強のスナイパー”として英雄視されているカイルですが、この映画で描かれるのは、そんな彼が、『硫黄島からの手紙』の兵士たちと同じように、戦場の体験に苦しめられていたという事実。イーストウッド監督は、戦場の英雄を、PTSD(心的外傷後ストレス障害)で壊れゆく普通の父親として描くのです。

 また監督は、カイルが仲間を守るため、10歳にも満たない少年を撃ち殺さなくてはいけなかったという残酷な事実も描きました。さらに、妻子のいるイラク側のスナイパーを登場させ、単純な敵と味方という構図では見えてこない、戦場という極限状況に置かれた、一人の普通の人間の葛藤を見事に描ききったのです。カイルのささやかな幸せを予感させたところで、映画は残酷な終わりを迎えます。監督は、彼への追悼の意を込めて、あえてエンドロールに音楽をつけませんでした。

英雄か?犯罪者か?予想外のサスペンス

ハドソン川の奇跡』(2016)

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彼は本当に英雄なのか? 感動のサスペンスが展開する Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

 2009年1月15日、ニューヨークのハドソン川に155名の乗客を乗せた航空機が不時着。乗客・乗員全員が生還したこの事件は、そのものズバリ「ハドソン川の奇跡」として世界中で報道され、奇跡を成し遂げたベテラン操縦士サレンバーガー機長は英雄としてたたえられるも一転、その判断をめぐり容疑者扱いまでされました。イーストウッド監督は、この奇跡の裏にあった機長の知られざる苦悩に着目して映画化したのです。

 大勢の人命を救った彼が、なぜ犯罪者として裁かれる寸前にあったのか? 機長は、事故調査委員会から無用な不時着を敢行した容疑者として糾弾されていたのです。彼の判断は正しかったのか? 家族や仕事、お金……そんな普通の男と同じ重荷を背負いながら、事故のトラウマにさいなまれる機長の葛藤と共に、映画の展開は観客をスリリングなサスペンスに巻き込んでいきます。

 またこの作品でイーストウッド監督は、事故に遭ったのと同系の航空機をまるごとお買い上げ。巨大プールに浮かべ、155名の脱出劇を実際に再現しました。さらに、そんな大規模シーンにもかかわらず、基本的にリハーサルなしの一発勝負で撮影。劇中でトム・ハンクス演じるサレンバーガー機長が、機体から救命ラフト(ボート)を切り離すシーンがありますが、トムはその方法を知らされておらず、数分の格闘の末に成功。後ほど確認すると、機長本人も事故当時は切り離し方を知らなかったといいます。俳優の演技からセットまで、可能な限り本物に近づける。飽くなきディテールへのこだわりもイーストウッド映画の特徴といえるでしょう。

信じられないことばかり!事件も映画も衝撃の最新作

『15時17分、パリ行き』

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本物の英雄にして主演俳優! (左から)アンソニー・サドラー、スペンサー・ストーン、イーストウッド監督、アレク・スカラトス Mike Windle / Getty Images for Spike TV

 2015年8月、乗客554名を乗せたアムステルダム発パリ行きの高速鉄道車内で、イスラム過激派の男が自動小銃を発砲しました。「タリス銃乱射事件」と称されるこの無差別テロ事件で銃を持った犯人に立ち向かったのは、3人のアメリカ人青年たち。大勢の命を救い、バラク・オバマ大統領からホワイトハウスへ招待されるなど、一夜にして“英雄”となった彼らの勇気を映画化したのが、イーストウッド監督の新作『15時17分、パリ行き』です。

・本人たちをキャスティング!

 『ハドソン川の奇跡』では、実際のレスキュー隊員たちを本編に出演させたイーストウッド監督ですが、本作では、テロを防いだ若者たち本人を主演にキャスティングします。彼らの名は、米空軍兵スペンサー・ストーン、オレゴン州兵のアレク・スカラトス、大学生アンソニー・サドラー(当時)。演技については全くの素人ですが、命を顧みず勇気ある行動に出た人間は、その本人にしか演じられないと監督は思ったのかもしれません。

 幼なじみの3人は休暇の旅行中にたまたまこのテロリストと同じ列車に乗り合わせただけでした。事件の瞬間、どうして彼らはそろって危険に身を投じることができたのか? 映画は、信頼で結ばれた3人の絆の物語を、彼らの幼少期までさかのぼって描き出します。

・乗客役も本人!リアルへのこだわり

 イーストウッド監督は、彼ら3人だけではなく、実際に列車に乗っていた多くの一般人を乗客役としてキャスティングしました。また撮影も、実際に事件が起きた場所で敢行。とことんリアリティーを追求する、イーストウッド流の演出が冴えわたります。

 これまで、いくつもの奇跡を映画化してきたイーストウッド監督ですが、彼らを起用することで、ついに「信じられない実話」の一部となってしまいました。製作秘話が一本の映画になりそうな名匠の新作は、テロ事件の真実をどう映し出すのか? 公開はもうすぐです。(編集部・入倉功一)

映画『15時17分、パリ行き』は3月1日より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほかにて全国公開
オフィシャルサイト

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