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『シン・仮面ライダー』SHOCKER上級構成員デザイン秘話 出渕裕が目指したものとは?

クモオーグ、ハチオーグのデザインはこうして生まれた!
クモオーグ、ハチオーグのデザインはこうして生まれた! - (C) 石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

 庵野秀明が脚本・監督を務め、現代を舞台に新たな「仮面ライダー」の物語をつづる映画『シン・仮面ライダー』。本作のデザインを担当した出渕裕がインタビューに応じ、劇中に登場する秘密結社SHOCKER(Sustainable Happiness Organization with Computational Knowledge Embedded Remodeling)の上級構成員(クモオーグ、ハチオーグ)のデザイン制作秘話や、オーグメントを描く醍醐味を語った。(取材・文:編集部・倉本拓弥)

【インタビュー動画】池松壮亮&浜辺美波&柄本佑が語る、庵野監督との出会い

クモオーグに継承された“六角形の目”

(C) 石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

Q:『シン・仮面ライダー』のオファーが届いた時の心境を教えてください。

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出渕裕(以下、出渕):庵野くんとまた一緒に仕事ができることと、1971年に放送していた「仮面ライダー」をベースにした作品に再びチャレンジできる喜びがありました。以前、石ノ森章太郎先生の原作漫画をベースにした作品(『仮面ライダー THE FIRST』『仮面ライダー THE NEXT』)にもデザイナーとして参加したことがあり、再びチャンスをいただけたという気持ちもあります。同時に、自分の中では一度最適解を出したつもりで、難しさも感じました。

Q:『シン・仮面ライダー』のデザインは、前田真宏さん、山下いくとさんの三人体制ですが、出渕さんは主にどこを担当されたのでしょうか?

出渕:SHOCKER上級構成員の顔(マスク)です。当初は各々ラフでイメージ画を書いて提出したりもしましたが、結果的に上級構成員の仮面担当という形で落ち着いています。デザインはバイオクリーチャーというより、オーグメントとして能力を手にした者がライダー同様仮面マスクを被るというコンセプトで構築していきました。

Q:SHOCKER上級構成員のデザインはどのように固まっていきましたか?

出渕:デザインは、コロナ禍だったのでリモートで進めていきました。庵野くんの中では「『仮面ライダー』でもあるが、何か違うデザイン性も模索してみたい」というイメージがあったかと思います。でも、結構任せてもらえたかな。そんな中でも最終的には、オリジナル版の造形を現代風にプラスアルファした部分もあります。

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 例えば、SHOCKER上級構成員のクモオーグは、ドレッドヘアーを足に見立てた形など、いろいろ工夫していった中で、庵野くんから「オリジナルの蜘蛛男には、六角形の目が付いている。あの六角形を付けたい」と要望がありました。あれは蜘蛛の巣を意匠化したデザインで、六角形をつけるとコンセプト的には違うのではないか? というやり取りをしながらも、ペイントで六角形を加味することで現在のデザインに着地しています。結果的にはそれが大正解でしたね。

 そのほか、上級構成員の共通項として、その元になった動物のエンブレムをマスクにつけています。(オリジナル版の怪人デザインを担当した)高橋章さんへのリスペクトです。(編集部注:高橋さんは2月10日、老衰のため84歳で亡くなった)

ヒーローにも見えるハチオーグのデザイン

(C) 石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

Q:クモオーグのドレッドヘアーにこだわりはありますか?

出渕:メカ的な足をイメージして描いたりもしたのですが、何かが違うなと……。ドレッドヘアーは、アクション時に髪の揺れ方が気持ちよく見えますし、この長さが蜘蛛の足みたいに見えてくれるんじゃないかと思いました。もともと、現在のジャケット姿になる前は、ストリート的な服装の案もあったんです。話し合いを重ねるうちに、ジャケットの方が格好いいんじゃない? という結論に至り、現在のジャケットに変更されています。こちらは前田くんがデザイン担当ですね。

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Q:ハチオーグ(西野七瀬)のデザインについても教えてください。

出渕:オリジナル版の蜂女は口が出ていたと思いますが、『シン・仮面ライダー』ではクラッシャーをつけたいという話が出ました。デザインのベースは、地蜂(クロスズメバチ)です。女子が着用する部分も含め、少しヒーローにも見えるようなスタイリッシュな感じになればいいなと思いました。当初は後頭部に翅がついていたのですが、撮影現場の方から「翅があるとアクション時に外れてしまう」と指摘も受けたので、翅の部分はなくしています。ハチオーグのツインテールは地蜂の意匠を感じさせますし、翅がなくても成立しています。また、演者が入るので、マスクののぞき部分も確保しています。のぞきと強調するというよりは、のぞきだけどデザインとしても成立していることを意識して描きました。

悪とは何かをビジュアル化する楽しさ

(C) 石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

Q:庵野監督が最もこだわったと思われる部分はどこでしょうか?

出渕:仮面ライダーに関してはオリジナルの再現性にこだわった部分もあり、ブーツやグローブ、服の素材を合わせようと、当時のものを取り寄せたりもされていました。ブーツなど現在は販売していないものもあるので、そこはオリジナルに近いものを選んでいます。50年前の仮面ライダーはどうだったのか、細部までリサーチして合わせようとしていました。

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Q:いわゆる怪人をデザインする醍醐味はどこにありますか?

出渕:コンセプトを決めて、その世界観において悪とは何かをビジュアル化する楽しさです。作品の世界観は敵が決めていることもあると思うので、その世界観をデザインしてくことにやりがいを感じます。逆に言うと、コンセプトがブレブレのまま怪人たちが登場すると、その世界観が見えてこない場合もあります。細部には魂が宿る。オリジナル版に熱中していた僕たちは、そこが“魂の継承”だと思っているので、そういったアプローチを取っています。デザイナーはもちろん、造形担当や衣装担当の方達もそういった部分は大切にしていると思います。

怪人デザインは「天職」

Q:『シン・仮面ライダー』のデザイン作業を通じて、新たな発見はありますか?

出渕:いわゆる怪人のデザインは天職だと改めて思いました。もともと、私は仮面ライダーより怪人が好きで、中学生ぐらいの時から、初代「仮面ライダー」に登場させたいオリジナルのショッカー怪人を夢想してノートに描いていたりしたんです。当時、高橋章さんが手がけた怪人たちは、ベースになった生物を換骨奪胎し、抽象的なアレンジを施していて、やはり作品の世界観を支える重要なファクターとなっていました。やはり多大な影響を受けていたのだと改めて感じました。

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Q:デザイナーとしての視点から、本作の見どころを教えてください。

出渕:『シン・仮面ライダー』は、脈々と続く「仮面ライダー」の“原典”に立ち帰り、オリジナル版を観ていた世代が製作しています。古きを温ねて新しきを知る。ヒーローの“原典”でもある仮面ライダーを、直撃世代がもう一度問い直し、継承し直す作品になっているのではないかと思います。デザイン面では、今観直してもオリジナル版が古びず、それに寄り添う形で当時の世界観と現代的な部分を両立させる、つなぎとしての機能を果たしていると思うので、そこに注目していただきたいです。

映画『シン・仮面ライダー』は3月17日(金)18時より全国最速公開(一部劇場を除く)、3月18日(土)全国公開

『シン・仮面ライダー』池松壮亮×浜辺美波×柄本佑インタビュー 庵野秀明監督との出会い&ライダースーツを語る » 動画の詳細
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