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のん、アラサーの覚悟とポジティブな諦め力 監督作で表現への愛再確認

「表現をしないと生きていけない」長編映画『Ribbon』を完成させたのん
「表現をしないと生きていけない」長編映画『Ribbon』を完成させたのん

 女優・のんが企画、脚本、監督、主演を手がけた映画『Ribbon』を完成させた。コロナ禍で行き場のない気持ちを抱えた人々がエネルギーを取り戻していく姿を力強く描いた本作は、自らの心象風景をダイレクトに映し出した作品になったという。「今回、私は本当に表現することが好きなんだと強く自覚した」と語るのん。28歳となり「焦りを感じることもある」と笑いながら、「私は表現をしないと生きていけないんだなと。これしかないんだなと諦めることができてよかった。いい30代を迎えられそうです!」と表現者としての覚悟や、アラサーの率直な胸の内を明かした。

のん、ナチュラルな魅力全開『Ribbon』フォトギャラリー

コロナ禍で「否定されたような気持ちに」

主人公いつかについて「重なっている部分もあると思います」というのん監督(C)「Ribbon」フィルムパートナーズ

 YouTube Original 作品『おちをつけなんせ』に続く、2本目の監督作となる『Ribbon』。ユーモアと爆発力、人の温かみを感じられる作品として仕上がった本作は、その企画自体も彼女から発信されたもの。コロナ禍で湧き上がる思いを原動力として、いてもたってもいられずに脚本を書き始めたという。

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「2020年の(コロナの)第一波のあとは、芸術やエンタメが不要不急の活動に分類されて、議論も加熱していました。エンタメに支えられながら、エンタメに携わって生きてきたので、そういった場面を目の当たりにしていると、自分自身も否定されたような気持ちになって。反発したい気持ちが湧きました」と告白したのん。

 書き上がったのは、卒業制作展が中止となり、発表の場を奪われていく美大生・いつか(のん)を主人公とした物語。「憧れの存在である美大生を主人公にしようと思って、コロナ禍の美大生の方たちの状況をいろいろ調べていきました。その中で卒業制作展が中止となった方のインタビュー記事を見かけて、『時間をかけて作ったものがゴミのように思えてしまった』という言葉に衝撃を受けました。私自身もコロナがまん延してきた時期に、主催した音楽フェスを開催直前に中止にしたので、そのときに感じた悔しさとも共鳴して。この無念を晴らしたいという思いで脚本を書き進めていました」と世の中の擦り切れた思いをすくい上げたいと願い、脚本に向き合った。

監督業の醍醐味

「自分がやりたいことを実現していくというのは、本当に面白い」(C)「Ribbon」フィルムパートナーズ

 特撮チームとして『シン・ゴジラ』の監督・特技監督の樋口真嗣、准監督・特技統括の尾上克郎が参加するなど、強力なメンバーが集結した。その全てをまとめる、監督というポジションを担当したのんは、その醍醐味についてこう語る。「自分の抱いているメッセージをリアルなものとして届けられること。それが気持ちいいのかなと思います。自分がやりたいことを実現していくというのは、本当に面白い。さらに、それぞれの技術、脳みそを持った人たちが集まって、一緒に何かを作ったらこんな映画ができるんだという、化学反応を感じて。撮影をしていると毎日そういった瞬間に何度も出会える。ものすごく楽しいですし、アドレナリンがずっと出ているようで眠くならないんですよ! 俳優として作品に入っているときは、なんで監督はこんなに元気なんだろうと思うこともありましたが、こういうことなんだ! と(笑)」

 その言葉通り、本作には、のんのリアルな気持ちが映し出されている。主人公・いつか役を自ら務め、「描きたいものが、自分の衝動や欲望と直結しているので、いつかと私には、重なっている部分もあると思います」とコメント。「いつかは家の中でよく怪我をするんですが、それはコロナ禍の私と同じです(笑)。自粛期間中に家の中でずっと過ごしていると、なんだか注意力散漫になってしまって。信じられないくらい、あちこちにぶつけまくってアザを作っていました。アザを保冷剤で冷やす行動も、自分でやっていたことです。私の“あるある”のようなものも使っています」と楽しそうに語る。

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気持ちの強さを実感「表現することが好き」

 撮影現場では、いつかの親友役の山下リオをはじめ、キャスト陣の演技に心を打たれる瞬間を何度も味わったという。以前から親交がある山下にのんは、「リオさんが敏感に、繊細に役柄に挑んでくれました。そういったリオさんの姿を見られたことで、より信頼感が強まって、同志という感覚が生まれました。一緒に撮影を乗り切れてうれしい」と感謝しきり。演出は、「そのキャラクターの役割や伝えたいメッセージだけをお話しして、あとは役者さんにお任せしています。こちらで決めすぎずに、そのセリフをどうやって役者さんが解釈するのかを楽しみたい部分もある」そうで、役者との共同作業も大いに刺激になっている。

 いつかは、悔しさや怒り、せつなさを、エネルギーに変えて未来に向かって歩む。緊急事態宣言下でエンタメや芸術の優先順位が下がっていくのを見て「反発したい気持ちがわいた」と明かしたのんは、本作を通じて、さまざまな発見があったという。「もちろん命の方が大事だというのは当然のことですし、制限に対して無闇に争うわけにもいきません。そういう状況の中でも『映画を作りたい』という気持ちがわいてきたことで、自分はこんなにも強い気持ちでものづくりをしたいと思っていたんだ、こんなにも表現したい人だったんだということを、以前よりもずっと切実さと共に自覚できました。演技や、何かを作って表現することは、生活のためにも大事にしていることでしたが、コロナ禍で『表現することが好きだ』という、その好きの分量を確認できました」と熱弁する。

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 続けて「他のことができないダメな人間なので……。私生活がそんなに得意ではない方だなと思って」と口火を切ると、「自粛期間にはずっとお布団の上で過ごしていて。時々そっと出て、ニュースやNetflixを見たりしていましたが、こんなんじゃダメだなと思うこともあって。本当に、表現をしていないと生きていけないぞと思いました」と照れ笑い。

 現在28歳となり、「20歳になったときも『10代が終わってしまう……!』という気持ちはありましたが、30歳を前にして、やっぱりちょっと焦るものなんだなと思って!」とアラサーの心境を口にするが、「『Ribbon』を作って、自分の本当にやりたいことを確かめたということもありますし、『私はこれをやっていくしかないんだな、これしかないんだな』と、いい意味で諦めることができてよかったです」と笑顔。「いい30代を迎えられそうです。頑張ります!」と声を弾ませながら宣言していた。(取材・文・撮影:成田おり枝)

映画『Ribbon』は2月25日よりテアトル新宿ほか全国公開

スタイリスト/町野泉美 ヘアメイク/菅野史絵

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