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のん「原点はあくまで女優」監督経験も力に

のん『星屑の町』で6年ぶりの実写劇場映画に
のん『星屑の町』で6年ぶりの実写劇場映画に

 6年ぶりの実写劇場映画『星屑の町』で、歌手を夢見る等身大のヒロインを自然体で演じている女優・のん。昨年、YouTube Originalsの映画『おちをつけなんせ』で、主演はもとより監督・脚本・編集・衣装・音楽など全ての制作工程に携わり、表現者としてひと回り成長した彼女が、本作で改めて感じた演じることの楽しさ、そして女優への強い思いを率直に語った。

のん、キュートな七変化!『星屑の町』レトロ可愛い衣装集

 ラサール石井らによる演劇ユニット「星屑の会」の同名舞台シリーズ第1作を映画化した『星屑の町』。東北のある田舎町に巡業でやって来たおじさんコーラスグループ「山田修とハローナイツ」と歌手を夢見る地元の女性・愛(のん)が巻き起こす騒動をコミカルに描く。ラサール石井、小宮孝泰渡辺哲でんでん有薗芳記、そして戸田恵子ら舞台版のオリジナルメンバーが勢揃いするなか、レトロなファッションに身を包み、昭和歌謡を熱唱するのんのキュートな姿も必見だ。

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ヒロインの自信満々なところがそっくり

 実に6年ぶりの銀幕復帰。のんのもとに届いた脚本は、25年愛され続ける名作舞台の映画版だった。「すでにハローナイツの配役が舞台と同じキャストで決まっていたので、各キャラクターの表情や軽妙なやり取りを思い浮かべながら、楽しく読ませていただきました。こんなに芸達者な皆さんと共演するチャンスは滅多にないので、早く現場に飛び込みたい! と思いました」とニッコリ。

星屑の町
(C) 2020「星屑の町」フィルムパートナーズ

 のんが演じる愛は、歌手になる夢を諦めきれない勝気な女の子。何度断られても食い下がり、ハローナイツのセンターポジションを狙う。「とにかく真っすぐな女の子で、根拠のない自信を持っているところは、すごく似ているなと思いました。わたしも昔からうぬぼれているところがあって(笑)、まだ何も成し遂げていないのに、地元にいるころからなぜか演技に対して自信満々でした。自分の才能を誰よりも自分が信じている、という点で愛とうまく共鳴し合えたので、自然体で演じることができました」。

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 ロケ地は、第2の故郷と公言する岩手県久慈市。温かい人情に包まれて、愛をのびのびと演じたのん。ところが、昭和歌謡を歌うシーンだけは鬼門だった。「いつもボイストレーニングをしてくださる先生について、各曲の歌い方から勉強を始めたんですが、1曲のなかにいろんなテクニックが詰め込まれているのですごく難しかったです。特に藤圭子さんの『新宿の女』は、最初に弾き語りで聞かせる大事な一曲。情熱的な展開を汲み取りながら、この曲に込められた“歌心”も学ばなければならなかったので大変でした」と振り返る。

監督の経験から得た、女優としての瞬発力

 本作の撮影に入る前に、のんはYouTube Originals映画『おちをつけなんせ』で、主演だけでなく、監督ほか裏方の仕事を一手に引き受けた。ドキュメンタリー「のんたれ(I AM NON)」では、その悪戦苦闘ぶりを追いかけているが、この経験が女優業に大きな影響をもたらしたと、のんは言う。

星屑の町

 「今までは、監督に対して、『何をイライラしているんだろう?』『今のNGは何がいけなかったんだろう?』など、悶々と悩むことが多かった。でも、自分が逆の立場を経験したことによって、『個人の感情などかまっていられない』という心情がわかったんです。監督は映像全体に意識が向かっていて、私の気持ちなんてどうでもいい。ただ役をちゃんと演じることに徹すればいいんだ、ということがわかり、それからは、ストレスフリーで女優に打ち込むことができるようになりました」

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 この経験によって、女優としての“瞬発力”もついたというのん。「そのことで思いきりがよくなりました。今まではスロースターターで、いきなりターボをかけることに躊躇(ちゅうちょ)していたのですが、瞬間的にドーンと行けるようになった。瞬発力がついたことが大きな成長です」と胸を張る。

これからも女優として

 愛やハローナイツの面々は、いつかスターになって「スポットライトを浴びたい」と願っているが、この切なる思いにも共感するという。「お仕事の方向性にもよりますが、スポットライトはやっぱり浴びたいです。特にわたしは目立ちたがり屋なので(笑)、浴びるために頑張っているところもありますし、どうやったらインパクトを残せるか、ということを意識しながら、スタッフを巻き込んで作戦会議をすることも」。言われてみれば、映画、ドラマ、CMなど、どの作品を観ても、のんのパンチ力は半端ない。

星屑の町
(C) 2020「星屑の町」フィルムパートナーズ

 自信家で目立ちたがり屋な一面も、隠すことなく赤裸々に語ってくれたのん。そんな彼女は、2020年をどんなスタイルで走り抜けようと考えているのか。「音楽をやったり絵を描いたり、いろんな活動をしてきましたが、原点はあくまでも女優。わたしのなかで女優でなかったことは一度もないし、これからも女優として生きていきたい。今年はその思いが特に高まっています」。この作品を機に、女優への意識がさらに上昇していることは間違いない。この灯を消さないためにも、多くの映画ファンに本作が届くことを願うばかりだ。(取材・文:坂田正樹)

映画『星屑の町』は公開中

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