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『ニュー・シネマ・パラダイス』監督の最新作、巨匠モリコーネの音楽性を変える

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映画『鑑定士と顔のない依頼人』より
映画『鑑定士と顔のない依頼人』より - (C) 2012 Paco Cinematografica srl.

 イタリアを代表する世界的な映画音楽家エンニオ・モリコーネが、最新作『鑑定士と顔のない依頼人』で85歳にして自身の音楽性を変えるほどの体験をしたと語っている。

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 マカロニウエスタンの傑作『荒野の用心棒』で脚光を浴びて以来、50年近くにわたり数え切れないほどの映画音楽を手掛けてきたモリコーネは、母国イタリアのみならずハリウッドやフランス、イギリスなど世界各国の作品に優れたスコアを提供してきた。アカデミー賞の作曲賞部門でも『天国の日々』や『アンタッチャブル』などで5度候補に挙がり、第79回にはその功績に対して名誉賞が贈られている。

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 映画音楽の作曲家としてモリコーネが信頼され愛される理由は、そのメロディーやサウンドが単なる伴奏音楽に終始することなく、映画の世界観やメッセージを的確に表現するからにほかならない。しかも、クラシックからロック、ジャズ、ボサノバ、ソウルなどジャンルの引き出しが驚くほど多く、映画のストーリーや設定に即して自由自在に音の表情を変化させていく。その豊かさと奥深さが巨匠たるゆえんだ。

 その彼がジュゼッペ・トルナトーレ監督の最新作『鑑定士と顔のない依頼人』において、あえて「映画音楽の方向性を変えることにした」という。『ニュー・シネマ・パラダイス』以降の全てのトルナトーレ作品を手掛けてきた彼は、「監督の脚本を読むことで今まで眠っていたアイデアに目覚めた」と言い、映画の撮影が始まる前に楽曲は全て完成していたというから驚きだ。

 「観客が受け止めることができ、感じることのできる構造を持った曲を書く」ことを目指した彼は、監督と一緒に編集の現場にも立ち会い、映像に音楽を加える作業に加わった。「この作品をきっかけに、将来のわたしの作曲にも変化が出てくると思う」と語るモリコーネ。85歳にして新たな可能性に挑む、その勇気と柔軟性に巨匠の偉大さを痛感せずにはいられない。(なかざわひでゆき)

映画『鑑定士と顔のない依頼人』は、TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館ほかにて上映中

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