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中国当局の検閲を拒否する自主映画監督VS.当局の仁義なき戦い

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当局と闘うホアン・ジー監督
当局と闘うホアン・ジー監督

 このほど開催された第8回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門で、アジア各国のインディペンデント映画の状況を語り合う「アジアン・ミーティング2013」が行われた。その壇上、検閲を通さずに作品を作る中国の自主映画監督VS.当局の仁義なき戦いが明かされ、会場から驚きの声が上がった。

 参加者は、同部門に招待上映された中国映画『卵と石』のホアン・ジー監督、 韓国映画『離ればなれの』の監督キム・ペクジュン、台湾・ミャンマー合作『貧しき人々』のプロデューサー兼主演のワン・シンホン。ロッテルダム国際映画祭で最高賞を受賞したホアン監督を筆頭にそれぞれ国際舞台で活躍中だが、自国で自主映画が公開されるのはまれ。特に中国は、当局が許可した作品以外の上映は禁じられている。

 ホアン監督が説明する。「中国にアートシアターはなく、映画館で上映されるのは商業映画のみ。いくつかインディペンデント映画祭があり、私の作品もそこで上映されるはずだったのですが、そのうちの2つが政治的な理由で開催できなくなりました」

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 その2つとは、北京独立映画祭と重慶民間映画交流展。ホアン監督によると、北京では上映中、停電になったという。「当局は上映禁止を強要しません。その代わり、電気の供給を止めるんです。さらに厄介なのは、会場周辺地域全部を停電にしてしまうこと」。

 重慶の場合は根が深い。主催者のイン・リャン監督は昨年、『私には言いたいことがある』で上海で実際に起こった警察官殺害事件を描いた。だが同事件は警察による加害者青年への不当暴行がうわさされ、真相を追及する者は次々当局の標的に。タブーに触れたイン監督は現在、香港で亡命生活を余儀なくされている。つまり、大黒柱を失った重慶は開催できる状態ではないという。

 ただし、こうした当局との軋轢は、チャン・イーモウ監督やジャ・ジャンクー監督たちもくぐりぬけてきた試練。彼らは国際映画祭での実績を武器に中国での地位と、ある程度の表現の自由を勝ち取ってきた。ホアン監督も現状に屈せず、夫でプロデューサーの大塚竜治と共に次回作に挑むという。

 また、軍事政権下当時のミャンマーとタイの国境沿いで『貧しき人々』を撮影したワンもCMや企業PR映像制作で収入を得ながら、キム監督も生活費と映画製作費の両方を寛大な夫人にサポートしてもらいながら、共に新作を準備中だ。逆境をバネに、貪欲に映画製作を行う彼らの存在は、日本の映画人にも大いに刺激になるに違いない。(取材・文:中山治美)

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