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『悪人』の李相日監督、描いたテーマは「人間の本質は善と悪」

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赤裸々に語ってくれた李相日監督
赤裸々に語ってくれた李相日監督

 殺人を犯してしまった土木作業員の孤独な若者が、同じように孤独な女性と出会い、刹那(せつな)的な愛に身を焦がしながら逃避行を繰り広げる映画『悪人』を撮り上げた李相日監督が、妻夫木聡演じる本作の主人公・祐一が一瞬で悪に染まったように、監督自身の極私的な「悪人」体験を激白してくれた。

映画『悪人』写真ギャラリー

 祐一は、長崎の漁村で生まれ育ち、祖父母の面倒を見ながら解体業を手伝う普通の若者。出会い系サイトで知り合った佳乃(満島ひかり)を衝動的に殺すまでは、悪人ではなくむしろ善人だ。李監督は、「長い間時間を過ごしている分、家族間で突発的に悪意が生まれることはそんなに特殊なことじゃないですよ」と私的体験を切り出し、「映画の道に進む際、父親に大反対されました。確かにどうなるかわからない仕事で、腹が立つことに仕事はまったくなかった。仕方なく実家に戻ってバイトしていると、ほれ見たことかと(笑)。言葉に出さずともそんな父親の視線にさらされるうちに、ちょっと殺意を覚えましたね(笑)」と映画の主人公さながらの「悪人」体験を激白してくれた。ただ、誤解のないように、「今はもめていないです。殺意もありません(笑)」と一言。李監督流のリップサービスと受け止めてほしい。

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 一方で、「人間、自分ではどうにもならないこともあると思います」と続けた李監督は、「そこに追い打ちをかけられると、どうしようもない感情が生まれてくるものじゃないですか」と殺人犯の主人公・祐一の行動に一定の理解を示した。それは共感という個人的なレベルの問題ではなく、「普通の人たち、誰でも持っていそうなレベルの悪意ですね。それが表に出てくることが人間にはあると思います」と今回の映画『悪人』では極悪人ではなく、一般的な人間の悪に光を当てたと説明した。「基本的には人間は善意の生き物でしょうけれど、それ以外のものもあるという手触りが原作にありました。ある種のいやらしさを覚えつつも、どこかで人間は善意だけではないぞと。そこは原作と同じ思いで撮りましたね」と人間の本質は善と悪で成り立っていることを描いた。

 事実、劇中には加害者、被害者をはじめ複数の人間が登場するが、話が進むにつれていったい誰が本当の「悪人」なのか、受け手に再考を迫る趣向に。「僕らがニュースで見かける犯罪者というのは、そこに表現として出てくる段階では、悪の塊に見えるけれど、実際には家族がいて、そうでない瞬間もあるはずなんです」と人間は白と黒の間を行き来する生き物だとした上で、「もしかすると善意のかけらもない人間が世の中にいるかもしれないけれど、大ざっぱに言うと、そういうのが人じゃないかと。人間を探っていくようなヒューマンドラマが描けると思いましたね」と語ってくれた。確かに犯罪者のすべてが100%極悪人というわけではなく、善悪が混在しているからこそ過ちは過ちとして認識されるというもの。この映画を観て、本当の悪人、悪とは何なのかを考える機会にしてみてはどうだろうか?

映画『悪人』は9月11日より全国公開

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